考えなくなった大企業 三鷹光器会長・中村義一氏④

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なかむら・よしかず 三鷹光器会長。1931年生まれ。17歳で天文台に就職。機材修理の仕事をしながら独学で時計・望遠鏡などの開発技術を修得。66年に三鷹光器設立。天体観測機器から、医療機器、産業計測機器へ展開。世界の大手企業と取引。年商25億円。

最近は大企業がアイデアを考えなくなりましたね。先日、ある大手自動車メーカーの人が来て、いきなり「下請けになれ」と言われた。「ウチの会長はすべて下請けにする主義ですから」と。だから「俺も同じ。みなさんを下請けにする主義です。それがのめないならダメです」と言って断った。だって自分で考えて作ればいいじゃないですか。何もウチに来なくてもいい。結局、ウチからアイデアを引っ張り出して、作るのは自分たちでやるということ。ひどい話だ。

 その点、ドイツのライカ(世界的な光学機器メーカー)などはアイデアを考えた人への敬意を忘れていない。ライカに納める医療機器には、三鷹光器のブランド名も入れている。販売もそれぞれができることになっている。そういう条件ならいいが、最初から「下請けになれ」なんて、アイデアがないことを恥ずかしいとも思っていないようだ。

世の中がよくなるものをつねに生み出していく

ある大手電力会社もウチの特許が欲しいと言ってきています。太陽光集光装置の世界特許を持っていますから。8月17日に国立天文台と一緒に発表した技術ですが、たくさんの反射鏡を使って太陽の光を1カ所に集める。するとその部分の温度は20分で900℃以上になるというもので、さまざまなことに応用できます。そこに水を置けば、あっという間に蒸気となり、タービンを回して発電ができる。海水を置き、できた蒸気を冷やせば、真水を作ることができます。それを分解すれば酸素と水素になる。塩も取り出せます。

ウチの集光装置が優れているのは太陽光を効果的に集めることができる点。センサーを使って反射鏡を動かし、最も効率的な角度(誤差±1分)で太陽を追尾できるのです。ウチは1トン以上の大型望遠鏡をミクロン単位で動かす技術を持っていますが、その技術を応用したのです。

そういう特許を持っているからか、今、世界中の6社ほどが三鷹光器を買いたいと言ってきています。株主は私と兄弟の4人。売るつもりはありません。また、この太陽熱の技術で、中東のある会社から、海水を真水にして砂漠に流すという提案が来ている。海水1トンを真水1トンに変えたらウチにいくら入るという契約ができたら、その後は毎年自動的におカネが入る。でも、そうなったら今のウチの若い人は働かなくてもいいようになる。それでいいのかなと考えると、あまりやりたくはない。やはり人間は自分で考えて、世の中がよくなるものをつねに生み出していくようにしないといけない。

週刊東洋経済編集部
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