自分で判断しない風潮は危険 三鷹光器会長・中村義一氏③

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なかむら・よしかず 三鷹光器会長。1931年生まれ。17歳で天文台に就職。機材修理の仕事をしながら独学で時計・望遠鏡などの開発技術を修得。66年に三鷹光器設立。天体観測機器から、医療機器、産業計測機器へ展開。世界の大手企業と取引。年商25億円。

月探査機「かぐや」には三鷹光器の作った観測装置が搭載されています。これは他の大手企業が3年かけて開発したけれども作れなかったもの。ウチに発注が来たら半年で作ってしまった。このように特別なものは国からの注文が来るのですが、基本的にウチは公的なところからの仕事がありません。資本金が1000万円しかないので、事実上、入札に参加できないからです。

 だから極小血管の手術が可能になるウチの医療機器が入っているのは、私立病院の脳外科などだけ。国立の病院には入っていません。こういうところが日本はおかしいと思います。資本金が大きかろうが小さかろうが、作った医療機器がいいものであれば、病院は買えばいい。それによって救える命もあるはずです。

この点、アメリカは実にはっきりしています。いいものであれば買うし、悪いものであれば買わない。作っている会社の規模など関係ありません。自分たちの目で見て判断して買っていきます。だからウチの売り上げの7割はアメリカ向けです。

世の中全体が資格万能主義に陥っている

資格重視の風潮が強まっていることも日本のよくないことの一つです。今の時代、資格を取っても仕事がないということはいくらでもあります。ところが国は資格を取らせることにやっきになっているし、親も子どもに資格を取らせることが親の責任を果たすことになると考えているようです。世の中全体が資格万能主義に陥っている。

ウチでは資格や免許を持っている社員を優遇することはありません。それらを持っている人はいつでも転職できると思っているから、本気で仕事を覚えない人が多い。少し厳しいことを言うとすぐに辞めてしまう。その一方で、資格を持っていない人は転職が簡単でないことを知っています。だから聞く耳を持っていて、一生懸命仕事を覚えます。この差は大きい。

認定マークがなければ取引しないという企業が増えていることも問題です。ある認定マークを取るにはA社製の測定器を使うといいます。冗談じゃありません。ウチはA社より精度の高い測定器を作っています。なぜ精度の低い測定器で検査された認定マークを取る必要があるのか。だからウチはそのマークは取らずに、自社で徹底的に検査をして出荷します。どれだけの負荷をかけたら壊れるのか、実際に壊して検証してから負荷を保証して販売しています。認定マークに頼って、モノの良しあしを自分で判断しないという風潮は、間違っていると思います。

週刊東洋経済編集部
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