銀行自己資本比率規制、産業界は積極的に見直し論議に参加せよ
金融分野の規制強化に向けた国際的な議論が活発化している。歴史的ともいえる政権交代が現実化したこともあって、わが国では、ともすれば世の中の関心の目が国内問題に奪われがちだが、この方面にも注意は怠れない。中でも、銀行の自己資本比率規制見直し(強化)論は、銀行業界のみならず産業界にも大きな影響が及びかねない。
最近、その国際的論議の場となったのが9月5日にロンドンで開催されたG20。9月24~25日、米国のピッツバーグに世界の首脳が集まる金融サミットの準備会合といえる同会議のテーマの一つが国際的な自己資本比率規制(BIS基準)の見直しであり、同会議が発表した「金融システムの強化に向けた宣言」の中にも「景気回復が確実となった際、自己資本の規模と質の向上を銀行に求める」という文言が盛り込まれた。
産業界にも影響は及ぶ
銀行資本の「規模と質」の向上が意味するものは何か。規模の向上は、資産と資本の相対的な関係である自己資本比率規制の最低目標水準引き上げであり、質の向上は、銀行の自己資本を普通株式などに限定するということにほかならない。
現行の国際自己資本比率規制では、自己資本は中核的資本(TierI)、補完的資本(TierII)で構成されている。今回、米国などが主張している資本強化策は、中核的資本の中でも、さらにコアとなる普通株式などのウエートを高めるべきだというもの。加えて、自己資本比率の最低目標水準を現行の8%から大幅に引き上げよ、としている。具体的に想定されている水準は12%だともいわれている。
ロンドンのG20でいかなる議論が交わされたかは定かではないものの、現時点で明白なのは、仮にこのような自己資本比率規制の見直しが実施された場合、邦銀は、規模、質の両面で相当厳しい資本強化策に迫られるということである。
国際的な議論は、バーゼルの銀行監督委員会でも行われ、同委員会は9月6日、「世界的な銀行危機に対する包括的な対応」を発表。自己資本強化だけではなく、従来型の自己資本比率規制のほかに、レバレッジ比率など多角的な規制のフレームワークを導入する方向性を示した。