銀行自己資本比率規制、産業界は積極的に見直し論議に参加せよ
これはピッツバーグサミットに向けたバーゼル委員会の意見表明であり、銀行の自己資本、自己資本比率規制を数段厳格化するという点で、米国等の主張と何ら変わらない。
こうした動きに対して、産業界は銀行業界の出来事と等閑視していてはいけない。確かに銀行が背負う問題であっても、自己資本比率が自己資本を分子、資産を分母とする比率である以上、銀行の自己資本に対する資産(の規模と質の)運営を通じて、資金の借り手である一般企業に影響が及ぶ。
そもそも、自己資本比率規制はそのようなメカニズムを発揮する。それでも金融システムの安定という効果が期待できるからこそ、自己資本比率規制に意義が見いだされている。だが、国際自己資本比率規制の導入以後、一般企業は事あるごとに「銀行借り入れが厳しくなった」という形で副作用を経験してきた。
国際自己資本比率規制が導入されたのは1980年代末。それに先駆けて、規制のあり方に関する議論が国内外で活発化。わが国も例外ではなく、監督当局と銀行業界が水面下で激しいやり取りを交わした。銀行業界は厳しい自己資本比率規制の導入に次のような懸念を抱いた。
「自己資本比率規制によって、銀行が供与できる与信額が、産業界などが銀行に求める与信額を満たせなくなるおそれが生ずる」
制度に起因して、貸し渋りを誘発しかねないという懸念表明である。これに対して、当時、国際規制導入を目指す監督当局が語ったのは「国際化、自由化が進展し、外国銀行の日本進出とノンバンクの機能拡大が邦銀与信額のギャップを埋める」というものだったという。銀行が抱く懸念は無用という反論である。
監督当局が語ったように、その後、国際化、自由化が進んで、外国銀行とノンバンクという二つのセクターが格段に与信機能を高めた。
今はどうか。国際的な金融危機の下で、わが国でも外国銀行のプレゼンスは大きく後退した。日銀統計によれば、今年4月から7月まで、外国銀行の貸出残高(平均残高)は前年比で30%台の減少を続けている。ノンバンクの与信機能も大きく傷ついた。彼らの与信機能が早期のうちに回復する見込みは乏しい。