銀行自己資本比率規制、産業界は積極的に見直し論議に参加せよ



 一方、この20年間に間接金融の偏重というわが国金融市場の構造問題はかなり是正され、直接金融の奥行きが深まった。その意味で、自己資本比率規制が銀行の与信機能を抑制することによって発生する信用収縮にバッファが備わったという見方もできなくはない。だが、直接金融が外国銀行の貸し出しの落ち込みやノンバンクの機能不全までをカバーすると期待するのは楽観的すぎる。

自己資本の大半を普通株式など中核的資本に限るようになると、銀行行動はどうなるのか。高い資本コストの吸収のため、従来よりもハイリスクな与信行動に出ざるをえないという説もある。理論的にはそうかもしれないが、邦銀の慎重な体質などを考えると、逆に資本毀損を恐れて与信運営が慎重化しかねない。

国際自己資本比率規制は、資産に一定のリスクウエートを乗じたリスクアセットとして計算するルールになっている。したがって、自己資本比率の維持のために、資産(リスクアセット)の膨張を防ぐ狙いから、低リスクウエート資産の積み上げに向かう行動も助長されかねない。ついでながら言えば、今回の規制強化の背景にある金融危機は自己資本比率規制が緩かったがために発生したわけではない。にもかかわらず、米国などは同規制強化を主張し、わが国にも同じ船に乗れと言う。率直に言って、理解に苦しむ部分がある。

等閑視すべきではない

再び、80年代の国際自己資本比率規制導入直前の状況について触れたい。当時、厳しい規制導入に対し、銀行業界のみならず、産業界も懸念を深めて、主要経済団体などが積極的な意見表明を行った経緯がある。それに比べて、今回の自己資本比率規制見直し問題をめぐる国内の議論の中に、産業界の存在はあまりにも見えてこないように思える。

問題山積で手が回らないという事情もあるのだろう。しかし、金融は資金提供者と資金調達者が織りなすつづれ織りである。産業界も主要プレーヤーとして銀行の自己資本比率規制問題に発言していくことを望みたい。

(浪川 攻 =週刊東洋経済)

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