プロ野球「私設応援団」の知られざる世界 年間80試合の観戦と仕事を両立できる方法
この私設応援団の活動を研究テーマに据えた学者がいる。奈良教育大学の高橋豪仁教授である。スポーツ社会学者である高橋教授は、私設応援団の活動が集団形成上極めてユニークであることに着目。フィールドワークのために、トランペットの練習までして自ら応援団に加入した経験を持つ。
高橋教授が私設応援団に着目したのは今から29年前。修士論文のテーマ探しのために神宮球場へ行き、ビニール傘の応援を考案した、ヤクルトスワローズの名物応援団長・岡田正泰氏(故人)が観客を鼓舞する姿を目の当たりにした。
バラエティに富む私設応援団の面々
高橋教授が奈良教育大赴任を期に、甲子園球場で活動する広島東洋カープの応援団「神戸中央会」に入会したのは1998年。「トランペットを吹きたい」と言って入会した。私設応援団に参加している人の属性は極めてバラエティに富んでいて、性別も年齢層もまちまち。学生や主婦、大企業の営業マン、中小企業の経営者、職人など、職業もいろいろ。時間に縛られるごく普通のサラリーマンが参加しているのは、参加回数を強制するような力学が働いていないからだろう。
比較的規模が大きい私設応援団だと、会長以下副会長、団長、監査、書記などの役職が設けられており、大企業さながらの組織が形成されているケースもある。しかもそれはそこに集う人々が自発的に形成したものだそうだ。カープファンだということ以外何も共通点がない、赤の他人が寄り集まった集団でありながら、極めて濃厚な人間関係が自発的に形成されている。
さらに、球団によっては、私設応援団が全国に相当数存在し、それぞれに自らの地元で応援活動に従事しているケースもある。そういう球団の場合は連絡会的な組織が形成されていて、各地の応援団同士で遠征し合って共同で応援活動を展開することもある。応援団の数が少ない球団だと、おのずと遠征回数も多くなる様だが、いずれにしても参加を強制されることがないからこそ、職業との両立も可能なのだろう。
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