高島屋の「空港型免税店」、後発組が描く戦略 2017年春に新宿で開業、銀座とつばぜり合い

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高島屋の2015年度の免税売り上げは300億円と2014年度から倍増した。そのうち新宿店は96億円を稼ぎ出した。2017年春にオープンする空港型免税店について、高島屋の木本茂社長は、「保守的な見積もりで初年度目標は150億円と設定している」と述べた。

とはいえ、これまで急成長してきたインバウンドは、足元で減速懸念が広がっている。高島屋の免税売り上げは2015年度の上期、前年同期比3倍に膨らんだが、下期は同1.5倍だった。今2016年度は通年で350億円と、2015年度比15%程度の伸びを見込み(空港型は2017年度オープンのためカウントされない)、さらに鈍化する公算が大きい。

1人当たり単価は下落傾向

インバウンドの客の約8割は中国人で、円安により日本での買い物にお得感があったことが彼らをひきつけてきた。しかし、人民元は2015年夏時点に20円前後だったが、足元では円高の進行により17円台を推移している。それに伴い、高島屋の免税売り上げの1人当たり買い上げ単価は、ピーク時の10万円から9万円に下がったという。

ホテル新羅の韓社長は、「最高のパートナーと組むことができた」と述べた(撮影:風間仁一郎)

木本社長は「単価の下落は客数の増加でカバーできる」と、今後についても強気の見通しだ。合弁を組むホテル新羅の韓仁奎社長は、「韓国で運営している空港型免税店がウォン高に見舞われたときの経験を生かす」と、円高がさらに進んでも対処すべき策があることを強調。当時は売れ筋商品が高額の時計から化粧品へと、単価の低い商品に移行していく中、機敏に品揃えを変えていった。また、ウォン高になると韓国人が海外旅行をしやすくなることから、韓国を出国する韓国人客を取り込むことにも力を注いだという。

高島屋の業績は好調で、2010年2月期から6期連続の営業増益はほぼ確実だ(2016年2月期の決算発表は4月を予定)。その好業績を牽引するのが国内の富裕層と訪日観光客。空港型免税店は新宿に出店後、大阪での展開も予定しているという。成長トレンドを維持するためにも、新たな挑戦を成功させるしかない。

藤尾 明彦 東洋経済 記者

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ふじお あきひこ / Akihiko Fujio

『週刊東洋経済』、『会社四季報オンライン』、『会社四季報』等の編集を経て、現在『東洋経済オンライン』編集部。健康オタクでランニングが趣味。心身統一合気道初段。

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