ワイン造りの思想 その2 テロワール主義《ワイン片手に経営論》第13回
■ワインのラベルから紐解くテロワール主義
「ワインの質を決定する最大の要因は何ですか?」「千年以上前から、人はワインと宗教的な関わりがあった。基本的に地中海を中心とした地方で自然との宗教的な関わりを築いてきた。まず、もちろん土、化学肥料を入れない生きている土、それに気候だ」
by エメ・ギベール氏、ドマ・ガザック、ラングドック地方 アニアーヌ村
ジョナサン・ノシター監督「モンドヴィーノ」より
この言葉は、テロワール主義を典型的にあらわしたものだと思います。「土、それに気候だ」。眼前にある自然要素にある種の畏敬の念を抱きながら、ワイン造りをする思想です。ここにおいて、大地と葡萄は既定です。ブドウ品種は大地が選択したものであり、大地は時代を超えて存在する対象物です。ワイン造りが伝統的に行われているフランスには、このようなワイナリーが無数にあります。こうしたワイナリーでは、その大地をベースに、長い歴史が選択したブドウ品種の潜在力をどう100%引き出すかがポイントとなってきます。
古くからのワインの銘醸地であるフランスのワインのラベルを見ると、この「テロワール主義」の影響が色濃く反映されていることが分かります。
左の写真は、フランスの有名なシャブリという白ワインのラベルです。
「APPELLATION CHABLIS GRAND CRU CONTORLEE」とラベルの下の方に書いてあります。「CHABLISのGRAND CRU(特級畑)のひとつであるVALMURで造られたワインですよ」という意味です。フランスには、生産地やブドウ品種を厳格に規定し、品質やブランドの維持を図る「原産地統制呼称」という法律があるため、Chablisの特級畑で造られたワイン以外は、Chablis Grand Cruと名乗ることは出来ません。「神戸牛」でないのに、「神戸牛」と称して販売してはいけないという発想と同じです。
このラベルの上部にかかれている「SIMONNET-FEBVRE(シモネ・フェブル)」というのは、ワインの造り手の名前です。このラベルには一切、ブドウ品種は記述されていません。原産地統制呼称度の法律自体は、このほかに、品種、最低アルコール度数、栽培方法、醸造法、剪定方法などさまざまな規制をおこなっていますが、ラベルを見る限り、「どの土地でだれが造ったか」に大きく焦点があたっていることが明らかです。
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