ワイン造りの思想 その2 テロワール主義《ワイン片手に経営論》第13回

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■「産地」と「ワイン」の関係

 ここで紹介したムートン・ロートシルトは最高級ワインの一つであるため、シャトー名まで特定された形で記載されますが、ブルゴーニュと同様に、ワインのレベルが下がると、Bordeauxという地区名のみ記載という場合があります。「このワインは、ボルドーのどこかは知らないけど、とにかくボルドーで取れたブドウから作られています」というように、産地のくくりが大きい表示になっていきます。

 より身近な例で考えてみましょう。さくらんぼは山形県が日本一と言われていますが、その中でも鳥海(ちょうかい)という生産者が栽培したさくらんぼは、特に美味しいと評判です。ワインの畑やシャトー名まで特定するということは、「鳥海さんのさくらんぼ」として売り出すということです。Bordeauxという地区のみ記載することは、「山形のさくらんぼ」というレベルです。

 「山形のさくらんぼです」とプレゼントされただけで、「きっと美味しいに違いない」と喜びひとしおですが、「鳥海さんのさくらんぼです」とプレゼントされたら、もはや狂喜乱舞ということでしょうか。

 ワインの例に戻りますと、結局、「造られた土地とワインの質に相関性がある」ということが強く意識されているのです。こうした意識は、産地のとらえ方に大きく二つの方向性をもたらします。

 一つ目は、土地のちょっとした場所の違いも区別し、ワインの産地表示を細分化するというものです。ごく小さな範囲の温湿度環境を「マイクロ・クライメート(micro climate)」と呼びますが、ちょっとした場所の違いが異なるマイクロ・クライメートを生み、ワインの味に影響を与えます。そのため、土地を細かく区別し、品質を管理しようとするわけです。

 細分化の方向性は、特に優良な畑でワイン造りをする人たちにおいて顕著になります。優良な畑を擁する「土地」こそが、優れたワインをもたらす差別化ポイントであり、彼らの生活を支えているものだからです。畑を細かく分類し、それぞれの畑が一つのブランドとなっていくことになります。先ほど紹介した特級畑、一級畑は、このような考え方がベースになっており、実際に価値の高いブランドが多く存在しています。

 二つ目は、ちょっとした場所の違いを緩和するために、ワインを集めて大ロット化するというものです。こうしたやり方は、特級畑や一級畑のような高級な畑に属さない畑で造られたワインで多く見られます。「土地」での差別化を発揮することが難しいため、逆に畑を細分化せずに、複数の畑のワインをブレンドし、個々の畑の品質のばらつきをできるだけ抑えたワインを造ることになります。そして、これらは村名ワインや地名ワインとして売られていくのです。

 つまり、畑のグレードが下がってくると、テロワールを捉える枠組みの大きさが畑から村、地区、地域と大きくなっていくという傾向があるということです。なお、これはあくまでも畑の質を大きく分類した枠組み論での話です。枠組みとしてはグレードが低く分類されても、優れたワインを造っている造り手も多く存在します。

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