「ネットで資金調達」はアニメの新潮流になるか 消費者有利の時代を逆手に取った作品づくり

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――「僕たちがちゃんと出資しないと、この作品はできないんだぞ」と。総額もハッキリ出るから、投資したけど、それだけではなくて、じゃあツイッターで『CHIKA☆CHIKA IDOL』の情報を拡散しようとか、なんやかんやと手伝う気になりますね。

本条:かつてはテレビや雑誌など大メディアや広告が時代や流行を作れたと思うんですけど、インターネットの時代が始まって、どんどん消費者有利の時代になって来ていて、クラウドファンディングはまさにそうした時代に対応した仕組みだと思っています。消費者に決定権がある。

これまではクリエイターやメディア側が、ある程度「俺の作りたいものを見ろ」みたいなスタイルでやれたと思うのですが、これからはクラウドファンディングの出資者の要望に応じて作らなければいけないんじゃないかと思っているんですよ。ファンの意向に沿わないコンテンツビジネスはありえないですよね。

そうなると、僕みたいな立場の人間のコミュニケーション能力が問われると思っています。

アニメに日本も海外もないだろう

――日米展開のことについても聞かせてください。サイトや動画の英語版を作ったり、字幕付きのPR動画を作成されたりしていますが、それはやはり英語圏のクラウドファンディング市場の大きさを意識してのことですか。

本条:もちろんそれもありますが、クラウドファンディング実施を決める前から「アニメに日本も海外もないだろう」という気持ちがありました。アニメの「海外の反応」をまとめたサイトや動画が人気じゃないですか。アニメは言語圏を問わず楽しまれているし、ファンが勝手に字幕をつけてアップしたりしている。アニメは国境を超えやすいコンテンツなので、国に関係なく同時展開というのはずっとやりたかった事なんです。

普通だとちょっと躊躇しちゃうようなリスキーな試みの集合体の『CHIKA☆CHIKA IDOL』

――やはり登場アイドルの中にアメリカ生まれのアビー(アビゲイル・ウィリアムズ)がいるのは、英語圏を意識してのことですか?

本条:そうですね。それは意識しました。

あまり「日本人にしかわからない」という複雑なコンテキストに依らないコンテンツを目指そうというのは、Webサイトに掲載しているマンガの作り方にも現れているんですよ。あれは4コマまんがじゃないですか。コマ割りが複雑じゃない分、外国の方にも読みやすいんですね。

――ああ、確かに。なんでここまで外国にこだわるんですか。

本条:外国の方の反応自体が、僕らの刺激になるからですね。ネットで素直な感想が見られるのが大きい。日本国内の反応と海外の反応の両方あったほうが、励みになります。すでにFacebookでメッセージが来たり、アビーのファンアートを描いて送ってきてくれたりというのがありました。また海外でもニュースサイトで取り上げられたりして、そのコメント欄を見たりしています。

でも外国人の反応も、そう日本人と大きく変わるわけではありませんね。「CGより手描きが良かった」とか、「他のアイドルアニメと何が違うのか?」とか。

――外国のアニメ好きは、日本のアニメを普通に見ていますしね。

本条:違いとしては、アメリカの方が日本以上にDVDやBlu-rayは売れなくなっています。Netflixなども普及していますしね。クラウドファンディングサイトのアニメプロジェクトのコメント欄を見ると、意見の応酬がすごいですね。作り手側と頻繁にやり取りをしている。作り手側に直接、積極的に意見する姿勢は日本にはなかなかないかもしれません。

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