伊那食品に学ぶ「今の日本に必要な資本主義」

会社の決算なんて、3年に1度で十分だ

塚越:資本主義の末期だと思いますよ。皆、快適に生きていけるようにするのが大事なのに、下手に米国の経営大学院でMBAなんぞを取ってくるから、会社経営者も利益の最大化や、組織を大きくすることにしか目が行かなくなる。絶対的な能力主義がまかり通り、頑張っても成果が上がらない人間は切り捨てられる。人間の営みで最大のものは経済活動であり、人間は自分が幸せになるために生きているのですから、企業経営者は社員の幸せのために経営をすれば、自然と「いい会社」ができてくるのです。

大久保:欧米型資本主義の考え方を身に付けた経営者は、社員の給料や社員教育に掛かる費用をコストとしか捉えようとしません。給料はコストではなく、利益の分配であり、社員教育は投資だと思います。

塚越:外部のコンサルタントなどを入れると、彼らは利益を残すために経費削減ばかりを言う。こんなアドバイスは誰にでもできる。私はこれまで経費削減を1度も言ったことがない。経費はしかるべき使い方できちっと使えば、回り回って自分たちのところに戻ってくるものです。

大久保:利益を残して株主に還元しろというのは、まさに欧米型資本主義の典型的な考え方だと思います。

急激な成長には弊害も多い

塚越:そもそも、会社は株主のものだという考え方は、極めて原理資本主義的だと思います。「原理」というのは、何も進化していない、昔のままの資本主義であることを意味します。何も進化しないままで良いのかと、問いたいですね。それに、企業の決算なんてものは、3年に1度で良いと思います。そもそも決算なんていうものは、官が民に税金を納めさせるために作ったような制度です。利益を出して、税金で持って行かれた上に、訳のわからないものにおカネを使われるくらいなら、自分たちで使ったほうがよほど世の中のためになります。

大久保:市場改革の一環として、ROEが投資するうえで重要な指標とみなされています。でも、これが本当に正しい投資指標なのかと言うと、決してそうではない。むしろ、もっと別の切り口で「いい会社」は何かを判断するための指標を設けたら良いと考え、今、まさにその準備を進めているところです。たとえば社員の定着率、非正規社員の比率、有給消化率など、社員の幸せを追求している、本当に良い企業かどうかを判断するための指標をつくるのです。そうすれば、投資家の方々にも、本当に良い企業に投資することの大切さを、理解してもらえるのではないかと考えています。

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