なぜトヨタの役員に女性がいないのか、同質経営から多様性重視企業へ変化を
全上場企業の役員4万5204人のうち、女性役員は550人とわずか1・2%にすぎない(東洋経済調べ、取締役と監査役の合計、執行役員を除く、2008年8月時点)。これに対し、基準や調査範囲が異なるものの、米国では主要企業の役員のうち28%が女性だ(米NPOのGlobeWomen調査)。また、ノルウェーでは上場企業(=ASA、電力など公共企業が中心)の取締役会の男女構成比について、片方の性が40%を割らないよう法律で規定されている。
日本企業の中にもここ数年、多様な人材を重要な経営資源として活かす新たな経営手法であるダイバーシティ経営を理念に掲げ、実践する企業が増えてきた。もともと米国企業で導入された経営理念であり、当初のテーマは人種と性別であった。日本ではダイバーシティ=女性の登用・能力開発という色彩が強い。05年以降、ダイバーシティ推進の専門部署を設置する企業が急増、08年8月現在上場企業で133社に及ぶ。
ところが、昨年秋以降の世界的な経済危機の中、ダイバーシティ経営も足踏みしているように見える。上場企業の女性管理職比率では、全産業平均で3・5%と3年前からほとんど変わらない。ダイバーシティ担当部署からは「予算が削られた」という話をよく聞くようになった。不況を乗り切るためには、多様性を重んじるのではなく、以前のような同質の経営陣による「あうんの呼吸」が有効と考えているのであろうか。
何のための多様性か。言うまでもなく、企業価値・競争力を高めるためである。21世紀職業財団の調査では、女性社員比率が高く、女性管理職が多いほど、企業の経営判断指標や成長性指標が高いという結果が出ている。経済産業省の調査でも、女性比率と利益率の相関関係が認められるとの分析結果がある。
と言うと、必ず反論がある。「男女うんぬんを言うつもりはないが、日本の高度成長を支えてきたのは男が築き上げた企業社会。これが国際競争力の源泉だ。この仕組みを変える必要はない」。しかし、日本の労働生産性は低い。OECD加盟30カ国の中で20番目、先進7カ国では15年連続で最下位である。