なぜトヨタの役員に女性がいないのか、同質経営から多様性重視企業へ変化を
さらに、「俺たちは朝一番に出てきて、夜も最後。家族にはすまないがその分稼いでいる。ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の両立)で業績が上がるのか」とも主張する。けれども、1時間当たりの生産性を比べると、時短など制約があるワーキングマザーがいちばん生産性が高いという調査結果がある。
仕事や組織の見直しが目的
ダイバーシティ推進とは、仕事の仕方を根本的に変える、あるいは組織風土を一変させることにほかならない。それゆえ、これを実行するためにはトップの強力なリーダーシップが不可欠である。また導入例を見ると、多くが業績不振を経験、またはM&Aなどで外国人トップが来た会社であることがわかる。
パナソニックの中村邦夫会長(当時社長)はかつて経営立て直しに当たり、その海外経験から多様な人材活用に着目、これを推進することで従来のパラダイム変革に成功した。日産自動車のゴーン社長は、社内改革として女性管理職比率などの必達目標を掲げた。現状打破のためにも厳しい数値目標を立て、世間の目にさらす荒療治が必要だったからだ。
「日本企業の多くの経営者も、ダイバーシティ経営の必要性に気づきはじめている」と、女性管理職育成などを目的としたNPO、GEWELの代表理事、堀井紀壬子氏は指摘する。男女雇用機会均等法施行から23年、すでに均等法1期生は管理職年齢に達していることだけが背景ではない。堀井氏は「経済のグローバル化の中、多くの経営者は海外で女性幹部が果敢に会社をリードするのを見てきた。その経験から外国人を含めて多様な人材を登用することこそ、企業がグローバル競争で勝ち抜くための中核的な戦略との認識が生まれた」と指摘する。
問われるトップの本気度
では、なぜ足踏みするのか。どうやら原因は旗振り役であるはずの経営陣自身にあるようだ。
米国から来日したある人事コンサルタントは「なぜ、トヨタ本社に女性の役員がいないのか」と不思議がる。実は北米トヨタは「米国ダイバーシティトップ50」にも選定されるなど、日系企業の中でもダイバーシティに積極的な企業として認識されている。なぜ米国でできて日本ではできないのか。