【和地孝氏・講演】不確実性時代の成長戦略(後編)

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「不確実性時代の成長戦略」より
講師:テルモ株式会社 代表取締役会長 和地孝

中編からの続き)

●アソシエイト・プライド制度で個人成果主義からの脱却

 ここまでお話ししますと、順調に来ているかなと思われるかもしれませんが、やはり14期もずっと業績がいいと、社員の心の中に安住感が出てきます。あるいは、コミュニケーション面では、朝から晩までパソコンを使っていて、隣の人とは一切口を聞かないということもたくさん起きてきました。そういうことで、今回「アソシエイト・プライド」という制度を導入しようと思っています。
 この根本は、個人成果主義を外すということです。個人成果主義のいいところもありますが、弊害としてやはり「自分だけがいい」「隣は何する人ぞ」という意識が生まれるほか、自分の部下を育てようなんてことも考えない。こういう傾向が出てきましたので、チーム制をベースにした仕事のやり方に切り替えるという試行をしております。
 なぜ「プライド」なのかと言いますと、ライオンの群れは「プライド」と呼びます。そして「誇り」のプライドと引っかけまして、「アソシエイト・プライド」と言っております。

 ただ、これは組織変更ではありません。企業風土を変えるということです。自分たちが何を使命としてやるか、ミッションとしてやるかということがベースにあり、そのミッションを達成するためにどのテーマを選ぶかということを全員で議論してほしい。そのために組織はどうやってもいいというような位置付けです。ですから組織が先にあるのではなくて、中身が先にある。一番大事なことは、指示待ち体質から脱却しようということです。全員で考えるというような仕組みを、この4月から6月まで試行し、7月から本格実施ということになっています。
 狙いは、安住感や指示待ち、無関心、コミュニケーション不足など、こういうことを自分で考え、議論に参加する。アクションを起こすことにつなげていきたいと思っております。これは壮大なる実験ですが、「個人成果主義を脱却するぞ」ということを明言いたしました。

 最後に、私が経営者として自分に言い聞かせていることを三つお話させていただきたいと思います。
 一つは、「最も難しい仕事は自分がやる」ということ。とかく企業というのは、何が起きるか分かりません。そのときに、この意思を自分に言い聞かせておらず、どこかで逃げるのではと部下が感じたら、もうそれから彼らは付いてきてくれません。覚悟なき経営は滅びる。だから私は、最も難しい仕事は自分がやります。
 二つ目は、「選択に迷ったら難しい方を選ぶ」。これはちょっと矛盾しているかもしれませんが、経営でどっちにしようかという選択の場面はたくさんあります。どちらを選んだにせよ問題点があるわけなのですが、とかく易しいと思った方よりも、難しいと思った方は、その気でいくと問題点がむしろ明確になっている。易しいと思ったことは、やってみたら非常に問題がたくさん出てくるということも、経験上多々あったものですから、私は「選択に迷ったら難しいほうを選ぶ」というようにしております。
 そして最後に「時流に流されず、自流でやる」ということ。失礼なのですがマスコミやアナリストは、いろいろなことを言います。けれども、それに流されずに自分の頭で考えてやる。私は戦前生まれなものですから、終戦の時に今まで優等生だったものが、ある日可になり不可になると、こういう経験をしております。正しかった歴史が、一晩でガラッと変わる。こういうことを経験しておりますので、本当にそうなのかということを自分で考える癖を持っているわけです。
(終)

[当講演は2009年4月24日に開催されました]
和地孝(わち・たかし)
テルモ株式会社代表取締役会長。
1988年(旧)富士銀行取締役。89年よりテルモに入社し常務取締役に就任。93年に代表取締役専務、企業改革の実行役として94年に代表取締役副社長、95年に代表取締役社長を務める。2004年、現職に就任。
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