映画業界に明日はない、ヒット量産方程式の落とし穴
7月に入ると映画業界は夏休み向けの大作映画をここぞとばかりに公開し始める。今年も、『ハリー・ポッター』『アマルフィ』『ボルト』など期待の大作が並ぶ。
ここ数年、映画業界の売り上げのバロメーターである興行収入(映画館での売り上げ、以下興収)は2000億円前後で横ばいの状態が続く。ただ内訳は大きく変化している。日本映画(邦画)がじわじわとシェアを伸ばしており、昨年は過去最高の1158億円の興収となった。洋画に『ハリー・ポッター』のようなキラーコンテンツがなかったという事情があったものの、邦画が洋画を抜いたのは実に23年ぶりのことである。
その邦画人気の中心にいるのが東宝だ。『崖の上のポニョ』をはじめ、昨年興収トップ10に8本、ヒットの目安とされる興収10億円以上の作品は邦画28本中21本を占めた。今年も6月までの興収は前年比12%増、興収10億円以上の作品が11本と勢いは続く。まさに独り勝ちの状態だ。
ヒットを生む方程式は 作品の中身よりも宣伝力
しかし、「このところのヒット作品に、雑な作りの映画が多い」という話をよく聞くようになった。東宝の配給作品をはじめ興収が数十億円にも上る話題の作品の中には、完成度の低さにガッカリさせられる作品があるというのだ。
下表は2008年の興収ランキングに、評論家や観客、ネットでの評価を重ねたものだ。作品のヒットの度合いと観客の評価や満足度が一致していないものがある。つまり、「ヒット作・話題作と聞いて見たものの、必ずしも評価に値する作品ではなかった」とする人が多数いるという裏付けである。そうした“乖離”はなぜ生まれるのだろうか。