「肉食採用」に大胆転換、地方企業の胸の内 脱ハローワーク・リクナビ依存で何が変わる
同じく県外で経験を積んだ人材獲得を狙うのが、鹿児島市でお茶の製造・販売を行う「下堂薗」。三代目の下堂薗元さんは、Uターンして鹿児島のために働きたいという人材を採用するために、「ふるさと納税」をもじった「ふるさと納”J”」という企画を立てた。
「ふるさと納”J”」の”J”は、“地元愛”の頭文字である。具体的には、6カ月間、遠隔で新規事業立ち上げの準備に関わってもらい、その報酬として毎月鹿児島の特産品や、鹿児島往復チケットを届けるというもの。
「人は面接では分からない」という思いから、時間をかけて候補者との相互理解を深める方法を考えていたところ、候補者は今の職場で副業を禁止されているケースも多いという意見を聞き、金銭的報酬ではなく特産品を送るというアイデアを思いついたそうだ。
このほかの会社からも、求人票を出して待つだけという方法を脱却しているのはもちろん、理想の人材に自社を知ってもらう、候補者と会社が理解し合う、といった目的のため、ある程度時間も手間もかける(しかしコストはそれほどかからない)創造的な案が多く発表されていた。
採用活動は、経営の見直しや広報活動につながる
今回のプロジェクトは、採用という課題を通じて各社の経営そのものを見直すきっかけにもなったようだ。ある経営者は、スタッフと1泊2日の合宿をし、会社のビジョンについてみっちり話し合ったという。
「採用活動は企業の広報活動でもある。効果的にやればかなりのPR効果も得られる」と講師の菊池さん。欲しい人材に伝えるべきメッセージを考えることが、会社の将来像の整理や現状の改善活動にもつながり、会社の個性や魅力を際立たせることにつながるのだろう。
発表者のひとりは「よくもこんなに活動的、意欲的な方々が集まったなと感じた」と、プロジェクトの印象を語った。参加した8社は業種も歴史もさまざまだが、発表者は一様に自社の未来に真剣に向き合う、愛社精神にあふれる人たちだった。半数は社長または次期社長という立場にあるので、愛社精神があって当然かもしれないが、残りの半数の人たちも「社長の人柄に惹かれて入社した」というようなケースが多い。
このプロジェクトに参加しているという時点で、前向きなエネルギーのある会社には違いなく、当然ながら鹿児島の企業がどこでも魅力的なわけではないだろう。そして魅力ある企業とて、「肉食採用」のプランを立てるだけでなく、実践していかなければ事態は何も変わらない。
地元に残って、あるいはUターンやIターンでやりがいのある仕事に就きたいと考える人たちと、企業とのマッチングがうまくいくのか。これからが正念場だ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら