「肉食採用」に大胆転換、地方企業の胸の内 脱ハローワーク・リクナビ依存で何が変わる
ほかの会社でも採用手段はハローワークや知人の紹介に限られることが多く、コストをかけるとしても「リクナビ」のような就職ポータルサイトに掲載するところまで。そうなると、たとえ魅力的なポストを用意しても多数の企業の中に埋もれてしまい、地方の中小企業は不利である。
今回のプロジェクトを運営する株式会社マチトビラの代表・末吉剛士さんは、このような採用方法を「従来型の横並びな“草食系採用”」と位置づける一方、このプロジェクトを通して「欲しい人材を自ら取りに行く“肉食系採用”」を生み出し、鹿児島発で全国の地方企業の人材確保に活路を開きたいと意気込む。
まず各社の企画に共通するポイントは、「欲しい人材」の明確化だ。10月に行われた初回のワークショップでは、講師の菊池龍之さん(株式会社コヨーテ 代表取締役)がそのことを具体例とともにレクチャーした。
その後、各社は採用したい人材の「ペルソナシート」を作成している。ここで言う「ペルソナ」とは、「こんな人に働いて欲しい、または一緒に働きたいと思う理想の人物像」のこと。イメージする人物について、職業的なスキルや経験だけでなく、年齢、性別、家族構成、趣味、価値観、ライフスタイルなど、かなり細かい「キャラ設定」を行ったのだ。
明確な「キャラ設定」から生まれたユニークな企画
「ペルソナシート」を作成すると、ハローワークや就職ポータルサイトに情報を載せ、応募者の書類選考をし、面接を経て採用を決める、という方法が必ずしも有効ではないことが見えてくる。
昭和14年創業の老舗である「下園薩男商店」の三代目・下園正博さんは、来年オープン予定の直販店でギフト部門の運営を担う人材を求めている。欲しい人材像として作成したのは、「芸大を出て東京の大手企業で働く25歳の独身女性」というペルソナだ。
当初は、近隣在住でデザイン関係の経験がある30代の女性を採用したいと考えていた。しかし、狭い地域でそのような条件に合う人がいればすでに知り合っているはず。しかしまだ出会っていないということは、見つけるのは難しいと気づき、もう少し若くても東京の企業で鍛えられた経験のある女性に目を向けたそうだ。
そこからどんな採用プランが導き出されたのか。ユニークなのは、採用広告やWebサイトなどで設定した人物の感性に訴えるようなメッセージを発信しつつ、同時に会社と地元の案内を兼ねた「観光就職ツアー」を実施するというアイデアである。
会社に興味をもってもらうことに成功したとしても、東京に暮らす若い女性がすぐに移住と転職を決断するのは難しいだろう。そのような「採用される側」の目線に立ち、会社や生活の場となる土地を知るための時間をじっくり取ってもらおうという企画なのだ。
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