新線ラッシュの関西鉄道、運用状況は明暗くっきり《鉄道進化論》
ただ、6月15日に朗報が届いた。開通に伴って投入した新型車両「3000系」が「ローレル賞」に選ばれたのだ。鉄道ファンの全国組織「鉄道友の会」が、性能やデザインなどで優れた車両に贈る賞である。
3000系は月をイメージした円弧のデザインや、車内になめし革調のシートを1列+2列で配列するなどの独自性が評価された。実は、同社はデザイン開発に当たり、初めて外部デザイン会社を採用したという。同時に、女性顧客の意見を取り入れる協業型マーケティングを展開。それらが今回の受賞で花開いた。
“幻の新線”が動き出す? それでも不便な関西鉄道
まだ構想段階だが、関西にはほかにも新線計画がある。中でも大型の新線として注目されるのが、大阪中心部と関西国際空港を30分程度でつなぐ「なにわ筋線」だ。
市内に南北を貫く新線を引き、それをJRと南海電気鉄道の二つのルートにつなげる構想のなにわ筋線は、80年代に計画されて以降、長年凍結されてきた“幻の新線”。その構想がここに来て再浮上している。4月にJR西日本や関西私鉄大手、大阪府などによる懇談会が開催された。7月には事務担当者の検討会議が計画されている。事業者として手を上げている鉄道会社も動きを表面化。JR西日本の関係者は「実現に向けての具体的な動きはない」と煙に巻くが、南海はなにわ筋線などの調査を進める専門部署を設置した(部員5名)。ただ、府など自治体が財政難に苦しんでいる時期だけに、3000億~4000億円とされる事業費負担の配分などをめぐって交渉が難航することも予想される。
また、阪急電鉄も国が中心となって検討している「西梅田・十三(じゅうそう)連絡線」構想に備えるが、「具体的なスケジュールには乗ってきていない」(阪急・都市交通事業本部の奥野雅弘副部長)としている。
新線ラッシュの関西だが、実のところ鉄道ネットワークの利便性が格段に向上しているとは言いがたい。「相互直通を開始した線は、メジャーな線ではない」(鉄道事情に詳しい明治学院大学・国際学部の原武史教授)。そもそも原教授は、「関東の人間にとって、関西の鉄道は非常に不便に感じる」と指摘する。