日本の行政は商業地を起点に街をつくれない 団地とショッピングモール開発は何が違うか

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大山:あまり好まれるタイプではないのかもしれません。とくにアトリエ系とは相性が悪いようです。しかしジャーディは論理的で面白いですよ。これは実現しなかったのですが、北海道の苫小牧に工業団地と住宅商業施設を混在させる新しい都市のマスタープランを描いています。いま見ると形態的には古いところもありますが、考え方はまさにショッピングモール的なものそのものです。

団地という点で言えば、ご存じのようにぼくはずっと団地も研究してきました。今回、ショッピングモールについて改めて考えてみて、両者は「行政/民間」「鉄道(駅前)/ロードサイド」「住宅/消費」の三つの対比で論じられるのではないかと思い至りました。

団地というのは国を挙げて戦略的に進められたものでした。それに対していまは、UR(独立行政法人都市再生機構)が団地リノベーションと言って民間と共同で再活用に取り組んでいる。ショッピングモールも同じですね。

:三つの対比の関係はどうなっているのですか。行政がつくったものは鉄道で住宅で……とかなのかしら。

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大山:それはまだよくわかっていません。まだアイデア段階で、もう少し掘り下げたいと思っています。たとえば団地のなかに消費する場が存在したのかどうか、そういうことも含めて考えたい。団地というのは住宅難への対応だった。では、そこに商店街や、あるいはショッピングモールのようなものをつくろうという計画はあったのか。団地を一生懸命つくっていた時代と、いまのショッピングモールがつくられている時代というのはどういう違いがあるのか。

:日本の行政は、住宅地の造成には熱心ですが、商業地の再開発にはあまり力を入れない傾向がありますね。むしろ再開発を規制する側に回っている。そのあたりに考える鍵があるかもしれません。

大山:そうですね。考えてみれば、行政が商業地を開発しないというのも不思議な話です。

街を再生したいなら商業地を変えよ

:こういうことでしょうか。この国の行政は、商業地を中心とした街づくりのメソッドを持ってこなかった。その役割は、中間のデベロッパーが果たしてきた。でも、街を再生しようとしたら、商業地を変えないと活性化するはずがない。最近の事例では、たとえば品川駅周辺の再開発は失敗したと言われている。敷地を区切ってオフィスビルは林立したけれど、オフィス人口だけが増えて終わってしまった。それに比べると六本木ヒルズのほうがはるかによくできている。これは市川宏雄さんの本に書いてあるのですが。

大山:渋谷の宮下公園の騒動を連想しますね。いろいろ騒いでいるうちに駅前のほうが大規模に再開発されてヒカリエもできて、人の流れがまったく変わってしまった。あれは結局なんだったのか。

:あの点については、行政の問題というよりも、この国の左翼的運動が持つ問題点が現れた事例かと思います。資本主義対ホームレスという対立構図ありきで話を考えているから、問題を取り違える。ホームレスのひとをサポートするのと、彼らが宮下公園を根城にして暮らしているのを容認するのはまったく別の話ですね。

大山:……これ、あまり面白い話にならなそうですね。

:敵を増やすだけなので、このくらいにしておきましょうか(笑)。

『幻冬舎新書』編集部
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