私のサービス論 「サービスとは、技術・商品の価値とユーザーの便益をつなげること」

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私のサービス論 「サービスとは、技術・商品の価値とユーザーの便益をつなげること」

サービスがサービス産業の専売特許であったのははるか昔の話。今やサービスは、あらゆる産業にとって最優先課題になっている。日本の名だたる企業のトップたちは、「サービス」をどう定義し、具体的にどのようなサービスを実践しているのか?各社のトップに聞いた。
(『週刊東洋経済8月11日・18日合併号の特別版』)

Q.御社にとって、「サービス」とは何ですか?

 当社は、先進・独自の技術をもって、社会の文化・科学・技術・産業の発展、健康増進、環境保持に貢献し、人々のクオリティオブライフの向上に寄与することを企業理念として掲げています。これらを達成するために提供するものが、当社の最高品質の商品やサービスです。

 こうした考えを基盤とし、提供する技術や商品固有の価値と、それを受け取るユーザーひとりひとりにとっての便益、使い勝手や満足を高める。「サービス」とはこの2つの接点に介在して双方をより強く結び付け、価値を最大限に発揮させる様々な活動の総称と定義しています。

Q.御社のサービスの具体例を教えてください。

 富士フィルム創業の流れや理念を受け継ぐイメージング事業では、写真文化を保持するための各種サービスの充実を図り、さらなる発展に努めています。世界最速の「顔」検出技術を搭載したデジタルカメラを発売するなど写真関連商品の向上、機能の充実といったメーカーとしてのサービス力を磨く一方、複合型ショールーム「FUJIFILM SQUARE」を本社ビルに開設。富士フィルムフォトサロン、ギャラリー「PHOTO IS」 、PHOTO MUSEUM、写真購入ショップ「フォトマルシェ」等で構成し、アート・文化としての写真の素晴らしさを体験できる場を提供しています。

 また、芸術写真を披露するWebサイト「富士フィルムウェブ写真美術館」を開設。国内の著名写真家の名作から新進作家の作品までをWeb上で鑑賞でき、気に入った作品は銀写真プリントにして購入を可能にしています。

 産業用では、高機能材料技術を活かしたフラットパネルディスプレイ材料事業として、偏光板保護フィルム「フジタック」に加え、液晶ディスプレイ用視野角拡大フィルム「WVフィルム」がデファクトとなり、世界のPCモニターの液晶化を急速に進め省エネ・省スペース化に大きく寄与、さらに液晶テレビにおいても現在採用が加速しています。

 またメディカル事業では、最新のデジタル医用画像診断装置や経鼻内視鏡などのサービス機器を提供し、人の健康の維持・管理に貢献。さらに昨年は、ライフサイエンス事業として、特定ケミカルを目的の場所で適切に反応させたり、活性酸素を自在に制御したりといった優れた写真フィルム/プリント技術を応用し、QOLの向上に活かすヘルスケア分野に進出しました。そして、これらの優れた製品・技術を基に、顧客や社会に対して時代に先駆けた新たな価値を提供すべく、それぞれの分野でプロフェッショナルなソリューション販売活動を行っています。

 ドキュメント事業における富士ゼロックスのカラー複写機では、商品力はもとより、人的要因である「販売対応」「保守サービス」を含めた総合評価において、直近で4年連続『顧客満足度No.1』(JDパワー・アジアパシフィック)を獲得し、オフィス業務の生産性向上に役立っています。

 Q.サービスを定着・向上させるために、どのような取り組みを行っていますか?

 サービスの原点は、社会に対し独自技術によって新しい価値を高い品質で提供することにあります。富士フィルムグループは、写真感光材料や電子写真(ゼログラフィー)に代表される当社グループのコア技術により、ファインケミカルから、オプティクス、エレクトロニクス、メカトロニクス、ソフトウェア分野等において、先進的で独自性の高い技術によりオンリーワンの製品を創出しています。そして、これらの優れた製品・技術は、ソリューションビジネスの重視によって、それぞれの顧客に対して最適化されるように提供されています。

 これらの品質を支えるものとして、ISO9001やISO14001の認証など経営のマネジメントシステムを積極的に導入し、顧客満足を追求する活動を進めてきました。特に2006年からは、これらの品質と環境のマネジメントシステムを統合して一体運営する取り組みを開始し、ISO第三者機関(JQA)より「統合マネジメントシステム(IMS)」の認証として運用証明書を取得することができました。さらにこの一環として、イメージング分野を中心とした事業部門および販売関連会社が、苦情対応プロセスの国際規格である「ISO10002」の自己適合宣言をいち早く行いました。

 また2005年度には、従来の仕事のやり方を抜本的に見直し、研究・開発・生産・販売・管理等のあらゆる業務をゼロベースで改革する富士フィルムウエイ活動に着手しました。06年度に重点的に取り組んだ活動では、企業として大切にする価値観・行動・姿勢を改めて定め、同時に、新しい仕事の定石(遵守すべき基本や手順)、実践の手引書と言える「富士フィルムメソッド」を制定するなど、サービス品質の向上に努めています。

 こうした経営品質を担保するマネジメントシステムのほか、特に環境面では「富士フィルムグループ グリーン・ポリシー」の制定、あるいはコンプライアンスの観点からは「企業行動憲章/行動規範」を小冊子化し社員全員に配布、付随する宣言書に署名を求めるなど、CSR経営の徹底、社会への幅広い貢献を推進しています。

古森重隆(こもり・しげたか)
長崎県出身。東京大経済学部卒。63年富士写真フイルム入社。06年10月から富士フイルムホールディングス社長。

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