エルピーダメモリは公的資金による支援認定、1600億円調達でDRAM最後の戦いに挑む

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 もっとも、このシナリオが絶対確実とは言い切れない。絶対なら公的資金ではなくファンドマネーでも何でも入ったはずだ。一番の心配は、各国政府が日本と同様に公的資金で自国のDRAMメーカーを助けること。独キマンダ社も公的資金の動きがなかったわけではなく、間に合わずに破綻した。もともとDRAM産業は各国政府の関与があり、支援が入ることは考えられる。

第2がエルピーダがパートナーとして期待する台湾の動き。台湾には6社のDRAMメーカーがあり、ここが市況攪乱の要因にもなっていた。これを台湾政府の支援で設立する台湾メモリー(TMC)に集約する計画だが、有力メーカーはこの構想に背を向けている。TMCがエルピーダへ出資し、他社を見捨てることが政治的に可能なのかはわからない。エルピーダにとっては単なる資金的な問題ではなく、汎用DRAMの生産委託という戦略の中核を台湾が担うだけに、台湾の動向が固まっていないのは心配のタネだ。

が、不透明要素はなくならないものの、エルピーダが生き残り、利益を上げるというシナリオは間違いなく存在している。十分にやってみる価値はあるのではないか。

今回の支援策の根本には、「DRAM産業が日本に必要がなくなるとマズイ」(経済産業省幹部)という認識がある。これについては「DRAMは汎用品なのでどこからでも購入できる」「もはやDRAMの需要の伸びは鈍化しており、それほど重要ではない」という意見もある。が、各国が自国産業の育成に躍起になる中、DRAM産業が自国になくて困ることがまったくない、とは言い切れない。一度、失ってしまえば簡単には取り戻せないし、まして現状、なにがしかの資金を投じれば生き残れる可能性はそれなりに高い。

認定証の授与式で、二階俊博経済産業相は「決してゴールではなく、ここからが事業計画出発であります」と述べたように、正念場がスタートする。

(山田 雄大)


《東洋経済・最新業績予想》
(百万円)    売 上  営業利益 経常利益  当期利益
連本2009.03  331,049 -147,389 -168,757 -178,870
連本2010.03予 400,000 -70,000 -80,000 -85,000
連本2011.03予 400,000 -50,000 -60,000 -65,000
連中2008.09  222,803 -40,106 -45,719 -45,642
連中2009.09予 160,000 -55,000 -60,000 -60,000
-----------------------------------------------------------
         1株益¥ 1株配¥
連本2009.03  -1349 0 
連本2010.03予 -600.3 0 
連本2011.03予 -459.0 0 
連中2008.09  -351.6 0 
連中2009.09予 -423.7 0 

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