エルピーダメモリは公的資金による支援認定、1600億円調達でDRAM最後の戦いに挑む
DRAM市況は07年後半から大きく下落した。1ギガビット製品は07年半ばの6ドル前後から08年12月には60セント割れまで落ち込んだ。当初は通常のシリコンサイクルの落ち込みだったが、08年秋以降は世界経済の悪化で需要が急縮小。さらに金融危機で資金繰りに窮した海外勢が損失覚悟で在庫処分に走ったことで需給バランスが完全に崩れてしまった。この時期は、最大手の韓国サムスン電子も含めて変動費さえも賄えない状況だった。
エルピーダは、省電力が要求され付加価値が高い、携帯電話向けなどのプレミアDRAMが約5割(07年度)を占める。これらの価格下落はPC用ほどではなかったが、昨年後半は携帯電話やデジタル家電の需要急減でプレミアDRAMの数量が落ち込んだ。PC向けの大赤字を賄えず、赤字額は雪だるま式に増えていった。
09年に入って、大手一角の独キマンダ社が破綻。業界内で生産効率の悪い旧世代ラインが止まったことなどから供給能力が落ちたため価格は反転している。しかし、現状1ギガビット製品(DDR2)で1.1ドルと、やはり利益が出ない状況が続いている。
つまり、エルピーダの経営の巧拙を超えた状況であるといえる。もちろん、そんなDRAMを事業領域に選んでいることを戦略間違いと言えないこともない(そもそもDRAM事業を切り出した専業なのだが)し、前期のMSCB発行(と失敗)など経営ミスもなくはない。
エルピーダは前期に巨額赤字を計上。期末に子会社増資などによって資金を確保したものの、今期中に返済期限がくる有利子負債(社債含む)が約1300億円と資金面はかなり苦しくなっていた。足元はキャッシュベースで黒字化が射程に入ったため、すぐに企業そのものの存続問題とはならなくても少なくとも次世代投資は難しくなっていた。
ただし、厳しいのはエルピーダだけではない。「DRAMは最後の戦いに入った」という坂本幸雄社長の言葉通り、サムスンは別格として韓国のハイニックス半導体、米国のマイクロン、台湾勢とプレーヤーはすべて次世代投資が出来るか予断を許さない。
エルピーダは、今回の公的資金を呼び水に合計1600億円を確保できたことで当分生き残ることができる。坂本社長がDRAM産業の近未来を「残るのは2社か3社。韓国が1社。日台連合が1社。アメリカ台湾連合が入ってくるかどうか」と予想する。ここに残れれば安定した利益を上げられるだろう。このシナリオは十分にありうることで、そうなった場合、株価は上昇し公的資金の優先株は損失を被らず利益を上げることさえ可能だ。