鉄鋼メーカー“寝耳に水”、資源メジャー合流の悪夢
一度は消えたはずの悪夢がよみがえり、鉄鋼メーカーが頭を悩ませている。
5月下旬、新日本製鉄など国内鉄鋼大手と資源メジャーの一角、リオ・ティント(豪・英)との鉄鉱石価格交渉が、過去最大の値下げ幅で妥結。右肩上がりの原料高騰に悩まされてきた鉄鋼業界は、ひとまず胸をなで下ろした格好だった。
しかし、それから2週間足らず後の今月5日、業界に大きな衝撃が走った。リオと同業大手のBHPビリトン(豪・英)が、西豪州における鉄鉱石生産を統合すると発表したからだ。
両社合計の年間生産量は2・6億トン。計画どおりにいけば、最大手のヴァーレ(ブラジル、同3億トン)に匹敵する鉄鉱石のスーパーメジャーが2010年央にも誕生する。鉄鉱石の海上貿易量(07年)に占める合算シェアは33%。日本企業に至っては、年間輸入量の約6割をリオとBHPに頼っていると推定される。
これまでも国内鉄鋼メーカーはメジャーの圧倒的シェアを背景に、価格交渉の席で煮え湯を飲まされてきた。そのメジャー同士の事業統合となれば、今まで以上の価格交渉力を手にし、原料の高値が常態化するおそれも強まる。
今回の発表に当たって両社は、合弁会社発足後も販売は従来どおり個別に対応すると主張している。だが世界鉄鋼協会、日本鉄鋼連盟とも公正な競争を制限するものだとして反対を表明。国内鉄鋼大手首脳も「同じ山から掘り出したものを別々に販売するだけ。事実上の統合」と不快感をあらわにする。
反発から一転合流
両社の統合話が持ち上がったのは今回が初めてではない。07年11月にも、BHPがリオに対して総額1400億ドルに及ぶ買収を提案。このときは鉄鉱石部門だけでなく、全面的な買収が念頭にあった。
ただし、世界が好況に沸いていた時期でもあり、リオ自身が即日反対を表明。08年11月にはEU独禁当局が事実上反対の立場を表明し、金融危機による財務面の悪化も追い討ちをかけたことから、BHPは買収を断念した。