帝国ホテルが受け継ぐ「日本の迎賓館」の矜持 創業125年、Made in Japanホテルの未来は
――帝国ホテルは、クリーニングなど日本初のホテルサービスが数多くあります。
帝国ホテルは今から125年前、1890年11月3日に、日本の迎賓館として誕生した。初代会長を務めた渋沢栄一が残した言葉に「用命があれば世界のどのようなものでも調達して便宜を図る。これこそが帝国ホテルが果たすべき役割と心得である」というものがある。
当社のサービスのベースには、多岐にわたる顧客の要望を実現するというDNAがある。古くは100年以上前に日本のホテルとして始めてランドリーサービスを導入した。
これは、当時の総支配人が、長旅を終えて海外から来た顧客に対して、洗濯を提供したことから。サービスを細かく積み重ねてきたことが、今につながっている。
2020年以降を見据え、人材育成に力を入れる
(経営資源が)ハード、ソフト、ヒューマンとあるなかで、ハード(設備)についてはきっちりメンテナンスをしてきた。ソフトというのは組織やマニュアルが時代にあったものになっているかどうか。そして最後はヒューマン(人材)だ。
2020年は帝国ホテル開業130周年に当たる。問題は2020年だけでなく、その先もどのように発展し続けるかだ。
この視点で考えると、この3~4年の間に立派な人材を一人でも多く育てることが、最大の経営課題になる。
「帝国ホテル東京」は1800人、「帝国ホテル大坂」は500人、毎年季節限定で開業している「上高地帝国ホテル」をいれると、全部で2400人のスタッフがいる。
新入社員が入って、研修をしたからといって、(帝国ホテル流のサービスを)すぐにできるわけではない。まずは、あいさつなど基本的なことがしっかりできるか。大きなホテルだが、押付けがましくなく、ちょっと離れた距離から、わが家に帰ってきたかのようなサービスを提供できるように心がけている。
――2016年3月期(連結決算)では、1988年以来の最高純益を見込んでいます。
2014年度に、20年ぶりに給料のベースアップを実現し、2015年度は2年続けてのベースアップを行った。現在の環境下だから、ベースアップや賞与の増額に前向きに取り組めた。このことがスタッフのモチベーション向上につながり、ホテルの魅力が増すことで、売り上げも拡大し、利益を確保できる。
そうなればスタッフの処遇改善や、上場会社として株主への還元、施設のメンテナンスといった設備投資にも回すことができる。(この循環を)愚直にしっかり回していくことで、2020年を無事に迎えたい。
――サービス力こそ、帝国ホテルの強みなのでしょうか。
現在のサービスは過去のチャレンジの積み重ねでもある。たとえば2012年に東京で開催された国際通貨基金(IMF)・世界銀行総会では国際会議の主要施設の1つとして、開業以来初、館内の端から端まで1週間貸し切り状態で対応した。
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