帝国ホテルが受け継ぐ「日本の迎賓館」の矜持 創業125年、Made in Japanホテルの未来は

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世界各国の財務大臣や中央銀行総裁クラスが集結したため、さまざまな国の料理を準備する必要があった。通常とは比較にならない問い合わせの多さや日本の財務省の方々との慣れない”協業”で、宿泊、会議、パーティを運営するのは大変な経験だった。

ただ現場のスタッフは、1~2日経った頃には自分たちのペースで顧客の先を読み、サービスを提供することができていた。この対応力こそ、長い歴史の中で培ってきた力なのかもしれない。

私の手元には、顧客から毎日5~6通、年間1500~1600通のコメントレターが届くが、すべてに目を通している。

もちろん、恥ずかしくなるような、お叱りの言葉もあるが、「いろいろなホテルに泊まったけれど、やはり帝国ホテルのサービスが一番」という声は増えていると思う。総支配人と社長を兼務しているため、現場の声を経営に直接生かすことができるのは利点だ。

高品質なサービスを維持する必要がある

――外国人旅行客の急増で、国内のホテル業界は追い風が吹き続けています。

エレベーター内のバラは1日3回交換して新鮮な状態を保つ

リーマンショック前に5対5だった日本人客と外国人客の比率は東日本大震災を機にどんっと外国人客比率が低下していたが、現在では外国人客が4割強のところまで戻っている。

今や宿泊客の6~7割が外国人客というホテルもあるようだが、長期的な視点で考えると、外国人客の比率が高くなればリスクも大きくなる。帝国ホテルでは日本人客が5割、外国人客が5割を目指し、達成したらそれを維持したい。ほどよいバランスが重要だ。

 

――価格設定や客室数についてはどのように考えていますか。

客室単価は3.4~3.6万円。本館上層階にある特別階「インペリアルフロア」の約150の客室に限れば、客室単価は4.5~4.7万円になる。上昇してきたとはいえ、客室数100~200規模の外資系ホテルの客室単価6~7万円とは比較にならないと思われるかもしれない。

ただ、931室で85~90%の稼働率を維持するためには、多少なりとも団体客に宿泊してもらう必要がある。年間の宿泊数によって年単位での契約料金が決まる企業向けの取引もある。外資系ホテルの客室単価と単純比較することはできない。

――同業では拡大路線をとる日系高級ホテルもあります。今後の成長戦略をどう考えているのでしょうか。

東京五輪まで大きな改修は行わない予定だが、その後は需要次第で、客室数増減の検討は行っていく。決して「東京、大阪、上高地以外はやりません!」というわけではないが、今までもこれからも、どんどんホテルを増やして売り上げを拡大させるという考え方はない。

チェーン展開では、高品質なサービスを高水準で提供できなくなる可能性があるからだ。ブランドイメージを毀損しないようにしっかり運営していくには、1つ、2つの増加はありえるが、大きく増やそうとは思わない。

中原 美絵子 フリーライター

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なかはら みえこ / Mieko Nakahara

金融業界を経て、2003年から2022年3月まで東洋経済新報社の契約記者として『会社四季報』『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』等で執筆、編集。契約記者中は、放送、広告、音楽、スポーツアパレル業界など担当。

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