ムダな保険で損をしないための3つの原則 再保険から学ぶ「正しい保険の入り方」

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このように、損害想定額の算出は大変に難しいのです。最近は、コンピュータの中でランダムに無数の地震を発生させ、その結果を何度もシミュレーションしながら計算精度を高めています。再保険コストを必要最低限に抑えるための技術革新です。

さて、プロ同士の保険取引である再保険から皆さんが学べることを、あらためて、整理してみましょう。

再保険から学べる、正しい保険の入り方

① ありえないと思われる事故も発生の可能性はゼロではない

高度な保険数理を駆使してリスク管理を行っていても、想定できない事故は発生するものです。それは個人の「安心・安全」を管理する場合でも同じです。そんなことはありえない、と楽観することなく、悲観的に想像してみることも保険の場合は重要です。そのような万一の事態にこそ、保険は必要なものなのです。

② 貯金で対処しきれない場合に限り、保険は有力な手段となる

保険会社は再保険でリスクヘッジしながら、財務力を高めてキャパシティを強化していきます。このプロセスは個人にも当てはまります。個人のキャパシティは貯金額などで決まってきますから、貯金で対処できる範囲のリスクは、保険に入る必要がありません。つまり、保険に入る時は「免責」を大きく取るように考えることです。

もちろん貯金の少ない人には、保険が必要です。しかし貯金が増えていけば、その分、保険を減らせます。むやみに保険に入るのではなく、どこまでを貯金で対処し、何を保険でリスクヘッジするかの見極めが大切です。

③ 必要以上の保険に入るのはムダにすぎない

保険会社と比べれば、個人に起こるリスクを想定することは一般的にそれほど難しいことではありません。保険の本には、人生で起こりうる代表的なリスクが整理されています。

判断しにくいのは「保障額」の想定です。保障額が大きいほど安心できる、と感じるかもしれませんが、余分な保障を買うことは単なる無駄遣いです。保険会社の再保険と同じように、いかに必要最低限に絞り込むかを考えることが大事です。

「保障期間」の判断も大事です。よく「生涯保障」という保険会社の宣伝文句を目にしますが、惑わされてはいけません。必要な期間に絞って保険は入るものです。

個人が保険に入る場合、企業が保険を利用する場合、そして保険会社が再保険を買う場合。どれも同じ保険である以上、基本的な保険の入り方は同じです。再保険を利用するプロの行動から、賢い保険の入り方を参考にしてみてください。

橋爪 健人 保険を知り尽くした男

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はしづめたけと / Taketo Hashizume

1974年東北大学卒、1984年米国デューク大学修士。日本生命保険に入社後、ホールセール企画部門、米国留学、法人営業部門を経て米国日本生命副社長。帰国後、損保会社出向、ジャパン・アフィニティ(保険ブローカー会社)代表取締役を経て2004年独立。企業向け保険ビジネスのコンサルタントとして活動。著書に『日本人が保険で大損する仕組み』(日本経済新聞出版社)

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