無敵のトクホ・新発売「ヘルシアスパークリング」《それゆけ!カナモリさん》

拡大
縮小

流行を取り入れたニューヘルシア

 「スパークリング」と言うとおり、炭酸だ。炭酸飲料は、飲料市場の中でもダントツに伸長しているカテゴリーである。ノンカロリーである緑茶市場の顧客層を、ゼロカロリー商品群が奪う形で市場が伸びている。ヘルシアも緑茶カテゴリーであるが、そのカテゴリーから、なんと、ブランドをそのままにして、流行の炭酸カテゴリーを派生させたのだ。

 花王、恐るべし。

 シュワシュワの炭酸で、甘酸っぱい味が何ともおいしい。渋みや苦みはほとんど感じられない。しかし、しっかり茶カテキンは540mg入っている。つまり、ヘルシアと同じ。「苦くて渋いのをガマンして飲んだあの日々はなんだったの?」と花王に問いたい。そんな気分になるほどオイシイのだ。

 ターゲットは、今までにヘルシアのまずさに挫折した人はもちろん、ただの炭酸好きも「カラダにいいから」と吸引し、「わずか21キロカロリーならチョコひとかけら分だからまぁオッケー」と、ゼロカロリー炭酸派も取りこもうっちゅう戦略なわけだ。

 唯一のスクリーニング条件は189円という価格か。500mlペットボトル飲料の価格レンジは通常150円。トクホなりの高価格帯に設定している。その価格を受容できる層を全て飲み込もうというのだ。

 ヘルシアスパークリングの戦略は、「足し算」だ。高濃度茶カテキンという、他にマネできない独自の必殺技、バリュープロポジションが基本となる武器だ。苦み・渋みをマイルドにし、低カロリーにして流行りの炭酸を加えて仕上げる。独自技術を基軸として、消費者の望むものを足し算で整合させていく。その技術とニーズの吸い上げをするマーケティング力には感嘆するものがある。

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2009年5月29日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT