ベンチャーが先導する再生医療、臓器移植の代替も視野に応用研究が進む

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ハードル高い日本を嫌い海外目指すベンチャーも

ベンチャーを育てる風土や仕組みが整っている米国に比べ、日本ではベンチャーの苦闘が続いている。

ジャスダックNEO上場のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J‐TEC)は、07年10月に国内初の再生医療製品となる自家培養表皮「ジェイス」について厚生労働省から承認を取得。熱傷患者の治療向けに、患者の残された正常な皮膚から切手1枚分ほどの表皮を取って培養し、3週間で全身を覆える畳1枚大の表皮を作製する。これで患者を覆い皮膚を再生させる仕組みだ。

昨年12月には、愛知医科大学で全身やけどを負った5歳児への移植が行われ成功。ジェイスは今年1月には健康保険の適用も受け、「現段階で週1回の出荷頻度は予想以上」(小澤洋介社長)と言う。

が、製品化への道は長かった。体内の立体的な臓器に比べれば移植が比較的簡単で拒絶反応もないのに、創業から承認まで約9年もかかった。保険適用が認められても、使用できるのは2~3度の重傷熱傷で、受傷面積が計30%以上の患者に限られる。さらに21枚以上の使用や、「広範囲熱傷特定集中治療」届け出施設以外での使用には保険が適用されない。J−TECでは「届け出施設で21枚を超えて使う場合は、自社負担で提供している」(小澤社長)と言う。国内で前例のない再生医療製品だけに、厚労省も慎重で不慣れな対応が目立っている。

国内で再生医療ビジネスが成り立ちにくいのなら、ベンチャー企業の視線は当然、海外へと向けられる。

「欧州で実績を作って、日本で認可を受けるための追い風にしたい」。こう話すのはセルシードの長谷川幸雄社長だ。同社は東京女子医科大学・岡野光夫教授の細胞シート製造技術を活用する、大学発ベンチャー。温度によって親水性と疎水性の両方に変化する培養皿を用い、培養された細胞を傷つけずにシートとして取り出す技術を開発してきた。

培養角膜の製品化に向け国内で臨床試験まで差しかかっていたが、仏リヨン国立病院のオディール・ダムール博士から同国での事業化を提案された。そこで製品化へのスピード重視から、欧州医薬品庁に申請し、角膜シートを欧州で先行発売する方針を決めた。同病院の細胞培養施設などで製造、ジェネシス・ファーマ(ギリシャ)、テバ(イスラエル)、オーファン・オーストラリア(豪)などの製薬企業を通じ、11年以降の販売が見込まれる。

もともと、医薬品はリスクビジネス。まして「再生医療は不確定要素が多く、輪をかけて難しいのでは」(依田氏)という指摘もある。何より重要なのは、結果をすぐに追い求めない辛抱強さなのかもしれない。

(週刊東洋経済)

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