アップルがMacとiPadを1台にしない理由 なぜマイクロソフト流の統合をしないのか

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インタビューを通じて感じたこと。それはアップルが改めて、同社製品の連携を通じて、「作り出す道具」としてのコンピュータを強調し、複数のデバイスの連携の必然性や、他社のデバイスとの違いを打ち出そうとしていることだった。

筆者の個人的な興味として、"プログラミングの道具としてのMac"についても尋ねてみた。アップルは2015年に、iPhoneアプリなどを開発する新言語Swiftをオープンソース化し、GitHub上でコミュニティを通じた進化の道を辿り始めている。

その積極的な取り組みから、Swiftは、モバイルアプリだけでなく、サーバ向けのプログラミング言語として成長することが期待されている。Swift自体はアップルプラットホームから切り離され、開発も実装も必ずしもMacやiPhoneに限られなくなり、より汎用性が広がったのだ。

Macはアプリを作り出す道具として魅力的

「Swiftは言語を作る際に、学びやすさを考慮して出発した。その結果、非常に始めやすく、しかしわかればわかるほど、その人のSwiftのコードは成長していく。若い学生たちの学びや成長に寄り添っている言語だと思う。すばらしい点は、たとえ授業で学んでも、習得すれば実際のプロのアプリが作れるようになる点だ」

そのうえでクロール氏は「Macはプログラミングの道具として魅力的な可能性を放つ」と考えている。

「Macで利用することができる(Swiftの)開発環境Xcodeには、Playgroundというすばらしい特徴がある。タイピングしてコードを組み立てて何かを作ると、その結果がその場ですぐに表示される仕組みだ。理解しやすく、楽しみながらプログラミングに取り組むことができるはずだ」

現在のMacでは、写真やビデオ、音楽といった身近なコンテンツを、カジュアルに作ることができるソフトウェアが備わっている。近い将来、カジュアルにモバイルアプリを作り出すソフトウェアが搭載されれば、MacとiPhone・iPadとの連携は必然のものとなるかも知れない。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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