福地茂雄・NHK会長--やるべきことをすれば視聴者は支持してくれる
就任から1年余り。NHKの体質改善は進んだのか。改革の手応えを福地茂雄会長に聞いた。
--民放キー局の視聴率が伸び悩む一方、2008年度上半期ゴールデンタイム(19~22時)で首位を獲得するなど独り勝ちの状況です。
数字を狙わなかったから視聴率トップがとれた。僕はアサヒビールのときから「コンペティターよりコンシューマーを先に見ろ」と言ってきた。視聴者にとって何がいちばんいいか、この報道が視聴者にどんな意味があるかを考えて行動しなさいと。なすべきことをきっちりとやっていたら、それが最終的には視聴者の共感を得て数字に結び付くのだと言っている。ただ、視聴率や接触者率(1週間に5分以上NHKを視聴した人の率)首位というのは、相対的な話。NHKの目標は相手がどうであれ、3年後に接触者率80%という絶対値をとることです。それと公共放送としては編集権の自立。ジャーナリストの権利で、公平、公正、中立といった義務を負っている。それを忘れてはいけない。
--就任当時は不祥事続発の影響で逆風が吹いていた。うつむいていた現場をどう立て直したのですか。
人、モノ、カネ、情報はそろっているし、素質もあった。それを引き出せるかです。不祥事以降は人員もおカネも減る一方で、職員には自分たちの仕事はどうなるのだろうという不安感があったと思う。その点で、私が会長に就任したとき、「いい番組を作るためのコストカットはしない」と言ったことが効いていると思います。その代わり管理費を節約しないといけないが、自分たちが作りたいものをきっちり作るという気持ちを引き出すことが大事だと思っています。
--縦割りの組織風土の改革に手応えは感じていますか。
この1年で明らかに見え始めた変化は、番組間や部局間で横のコミュニケーション、コラボレーションが生まれてきたこと。就任直後から役員の個室廃止、キャリアの複線化という人事制度の導入など、横串を入れる制度や仕組みは作りました。ただ形を作っても、毎日の制作活動の中でそれを生かしていけないと意味がない。