ユニクロの社会貢献は「社員のノルマ」なのか 古着「1000万着回収作戦」の知られざる裏側

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柳井氏の社内向け訓示はこう続きました。

「今、世界に約10万人の(ファーストリテイリンググループの)従業員がいるとすると、1人が100着を寄付すれば1000万着はすぐに達成できます。家族や友人も合わせると、きっと100着くらいなら服があると思います。それを集め、持ってきてほしい。この取り組みに関しては、いっさい政治的な意図はありません。難民問題は人命尊重の問題であり、われわれにできることは衣料支援なので、それをやるということに尽きます」

ユニクロ社員が主体となってみずからの血縁・地縁や知人・友人などを頼って古着回収を呼びかけていくことで、高い目標を達成していこうという掛け声です。このプロジェクト自体、とても崇高な考えに沿って実行されているものです。ユニクロ、ジーユーのヘビーユーザーを自負する筆者としても、この考えには大いに賛同するものがあり、昨年末の自室大掃除で出てきた古着10着ほどを店頭のリサイクルボックスに収めてきました。もちろん洗濯済みです。

ただ、よくよく考えてみると、それなりのヘビーユーザーの筆者のような人100万人が、それぞれ10着の古着を抱えてユニクロの店頭に足を運んでリサイクルボックスに入れるか、ユニクロ社員を通じて10着の古着を渡さないと、このプロジェクトは達成できない計算となります。これまでもそれなりに回収を進めてきたには違いありませんが、一気に約3倍のペースに引き上げるのは、なかなか至難の業のようにも思います。

柳井会長兼社長の理念と社員の思いの乖離

それを示すような社内通達が昨年末の12月28日、本社の仕事納めの日に発表されました。『1000万着という支援。あなたの助けが必要です』という今回のプロジェクトのキャッチコピーと共に流された通達のコピーが「現在、298万枚回収!」というものです。

このプロジェクトは2015年10月からの5カ月間で進められていますから、12月末ならば目標数値の5分の3、すなわち60%程度、単純計算で600万枚の古着回収を終了しているイメージでしょうか。実情はおよそ半分である30%弱の進捗状況といえます。

この活動、スタート当初は各店舗や社員(従業員)各人に任せる格好で進められたようです。ところが、目標に掲げたペースへの遅れに危機感を抱いたのか、本社関係各部署へノルマのような目標数値が当てられ始めます。部署ごとに幅はあるものの、社員1人当たりの回収目標が50~100着レベルで振り分けられたのです。

罰則こそありませんが、自己申告で回収した古着の枚数を報告して、それに関しては個々人の集計表が設けられ管理がなされています。毎週次ミーティングでグラフにして発表されているケースもあるようです。

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