ユニクロの社会貢献は「社員のノルマ」なのか 古着「1000万着回収作戦」の知られざる裏側
部署によっては書面を通してリサイクルボックスを取引先に設置してもらい、協力を依頼。各部署のリーダーといわれる責任者は、売り上げ予算とは違う性質のものではあっても、自身への評価や成績と関わるものという思いもあるのか、実績づくりに懸命なようですが、「数字合わせをするのはどうなのか」など、冗談とも本気とも取れる会話が現場では飛び交っているようです。かといって、個々人の持ち込み着数について、細かいチェックはされていないという話もあります。
話は前後するかもしれませんが、昨年11月初旬には
・同ミーティングで枚数実績の共有・進捗表の作成
・持参した日と枚数を報告・発表
・現在の回収枚数が解りやすくなるように表示拡大化
などの取り組みになり、このころは部署によっては20枚以下の申告者は上長からの呼び出しと弁明を求められたようです。そして12月末通達の「現在、298万枚回収!」へと進んでいきます。
同通達の後段では、「正月の帰省先で、実家の親兄弟や幼なじみに声かけをして、回収した古着を近所のユニクロ店舗へ持参してほしい」旨の内容が発表されます。最終的にこの持参分を各部の実績として換算するというものです。
果たしてプロジェクトの目的達成はできるのか
「1000万着回収プロジェクト」も残すところ1カ月。ここにきて、さらに関係各部署のプロジェクトへの取り組み姿勢が変わったという話が伝わってきています。進捗率を部署ごとに発表することになったようです。
そのために、競争形態を強いられているかのような雰囲気になり、部署によっては、1人100着を超えるノルマのようなものが課せられ、50着以下の人間は上長から呼び出し、個人個人に事情説明を求めるというもの。それ以外のスタッフにも毎週の数値報告義務と個人面談が設定されています。
ここまでの流れを見る限り、いくら全世界的な取り組みとはいえ、過去の経験値から推察して一気に約3倍のペースという目標は、あまり現実的だったように見えません。柳井氏の求める「難民救済」という崇高な「目的」。その目的達成のための「手段」であったはずの古着回収。いつの間にかその古着回収が、一部の中間管理職あるいは社員にとっては、「目的」にとって代わってしまったのでしょうか。手段と目的が入れ替わるのは、企業経営にとってあまり望ましくないことです。
さて、2月の声をきくと同時に、「1000万着回収プロジェクト」達成に向けての追い込みが始まったようです。ユニクロ展開の商業施設がある各地で、その地域と市民に「難民救済」の意義を理解してもらいながら古着回収イベントが開催されます。
いかに崇高な理想といえども、あたかも社員一人ひとりに精神論ともいえるようなノルマを課して進める取り組みは、企業の社会貢献活動として誇れるものなのでしょうか。これまでも労務問題がしばしば議論を呼んできたユニクロだけに、最初から世の中や地域をいかに巻き込んでいくかということに主眼を置いて進めていったほうが望ましかったのではと感じるのは、ユニクロファンの1人として、この1000万着回収プロジェクトの成功を祈っている筆者だけではないはずです。
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