「JXとの統合に反対」、東燃・中原元社長が激白 元トップが明かす石油業界再編への憂慮の念

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──経産省は石油産業の国際競争力を高めるため、という題目を掲げているが。

国際競争力って何ですか。1960年代の特振法でも、同じテーマを掲げていたが、収益力を高める具体的なメニューが見えない。(元売り各社が計画に掲げる)アジアでの精製販売事業なんて、欧米の石油メジャーがとっくに捨てたマーケットですよ。

肝心の国内の精製販売事業の収益力をどう立て直すのか。それこそが日本の石油供給の安定につながる。寡占化で国内の競争がなくなるのは、石油元売りにとってはうれしいだろう。統合でシェアが50%を超えれば、ガソリンや灯油の価格決定力が格段に上がる。私がJXの社長だったらバンザイ三唱ぐらいはするでしょう。

──再編は寡占化を生み、消費者のためにならないと。

安倍政権の経済政策の根幹は、海外に比べて高い日本のエネルギーコストをいかに安くするか、だ。石油価格を上げて家計を圧迫するのは、電力自由化の動きなどとまるで逆行している。今後の公正取引委員会の判断は、非常に大きな意味を持つだろう。

統合決議は数票の僅差だった?

なかはら・のぶゆき●1934年生まれ。1986~1994年に東亜燃料工業(現東燃ゼネラル石油)社長。日本銀行政策委員会審議委員などを歴任。

戦前から日本には、民族系と外資系の石油会社が共存していた。わが国の政府は外資を制約しようと、1934年の第一次石油業法に続き、1962年に第二次石油業法を作った。民族系が有利になるよう、石油精製能力拡張を割り当て、さらに共同石油を設立した。

その後、1980年代後半に私と出光興産の出光昭介社長の二人で、石油審議会で自由化を主張して、石油業法は撤廃に追い込まれたわけだ。

──元売り各社は低収益体質にあえぐ。東燃元社長としてJXとの統合には反対か。

かつての東燃ゼネラルは日本のエクセレントカンパニーだった。だが、今や財務が悪化し、2014年は子会社を減資してまで利益を計上。ついには自力更生の道を放棄したようだ。東燃ゼネラルを愛している従業員や関係者は、みな失望していると思う。JXと東燃ゼネラルの統合は、売上高10兆円対3兆円と完全にアンバランスで、東燃ゼネラルはのみ込まれる。

いちばん問題なのは、影響力のある株主がいないこと。現経営陣はマネジメント経験がまだ浅く、十分な収益を上げていない。いつまで38円という高配当を続けられるか。

東燃ゼネラルが統合を決議した取締役会は、トップが強く働きかけたにもかかわらず、数票の僅差だったと聞く。売上高3兆円の巨大な東燃ゼネラルが存在感を失ったのは誠に残念なことだ。

                        (撮影:梅谷秀司)

      (「週刊東洋経済」2016年2月6日号<1日発売>「核心リポート01」を転載)

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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