エネオス展開のJX、家庭向け電力での勝算 セット販売駆使で、首都圏シェア4%狙う
来年4月から始まる電力小売り全面自由化。これをにらみ、石油元売り最大手のJXホールディングスが、家庭向け電力参入の戦略立案を加速している。
系列のガソリンスタンドを活用して「ガソリンと電気のセット割引販売」を行うほか、KDDIと組んで「電気と通信のセット販売」も始める。「ENEOSでんき」というブランドで2016年1月から販売予約を開始。料金メニューはその直前に発表する。まずは全国の電力需要の3割以上を占める首都圏で地盤を築き、中部、関西圏にも進出していく方針だ。2020年には首都圏の家庭用シェアで4%近くに相当する、70万~80万件の顧客獲得を狙う。
石油需要が減少傾向にある中、同社は保有する燃料や土地という強みを生かせる事業として、水素などとともに“電力”を新たな柱に据えている。2000年からの段階的自由化を受け、2003年に電力事業に参入。以来、新電力(特定規模電気事業者)としてすでに自由化済みの業務用(高圧分野)に小売り販売をしているほか、電力会社に卸売り供給も行っている。2014年度の販売実績は約15億キロワット(kw)時で、新電力の中では4位。発電能力は152万kwを有する。傘下の子会社であるJX日鉱日石エネルギーのリソーシズ&パワーカンパニーが電力事業を担っている。
百貨店や航空会社とも連携
家庭向け電力小売りについては2014年10月に参入を決定し、具体的な戦略を練ってきた。メインに位置づけるのが、ガソリンと電気のセット販売による“顧客の囲い込み”だ。同社は東京電力管内でENEOSカードを約120万枚発券している。そのカード会員を対象にセット割引をすることで、カード会員とガソリン顧客の拡大を図る。すでに特約店に対して説明を始めている。また、系列の液化石油ガス(LPガス)販売店でも、電気とのセット販売を始める方針だ。
さらなる顧客拡大を図るため、他企業と幅広い提携も進める。個人向け携帯電話で約3700万件の顧客を持つKDDIと提携し、電気と通信をセットで割安に販売する方向で検討している。また、トヨタ自動車グループで約1200万人の会員を持つトヨタファイナンシャルサービスのほか、百貨店や航空会社などのクレジットカード会社と提携し、カード会員の紹介を受ける。複数のポイントサービス会社とも提携する。すでにTポイントカードとはガソリンスタンドでの提携を開始しており、来春以降は電気販売でも共通ポイントを導入していく。
消費者の関心が高いものの、まだ公表されていない電気料金だが、新電力としては大手の東京電力より安くする必要がある。さまざまなアンケート調査では、料金が5%程度安いと乗り換えを検討する人が増えると見られており、それが一つの目安になりそうだ。
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