この世界に入って学べば学ぶほど、今、お寺は大変な変革期に来ているのがわかります。単に『このままだと、お寺が潰れてしまいますよ』という議論だけではありません。世の中の変化が大きい今、日本仏教も変わらざるを得ない局面にあると思います。
大きく言えば、人類にとって仏教、宗教の精神性のようなものが大切になる時代。
私が仏教やお寺をイノベートしたいというよりは、仏教自身がイノベートしたがっているし、社会がイノベートされた仏教の登場に期待している部分もあるように思います。そのために、多少なりとも形になることに貢献したい。
しかし、アイデアや仕組みをどんなに工夫しても、一過性のもので終わるでしょう。宗教は、人です。時間はかかっても、ほんとうに意味のあることがしたい。『お寺づくり』という自分の得意なテーマから、『僧侶が学ぶ場』を提供することを始めました」
僧侶のビジネススクール「未来の住職塾」
2012年にスタートしたこの塾は、お寺を預かる住職が地域や宗派を超えて集い、真剣にお寺の課題やビジョンについて語り合い、お寺と地域社会の未来を描く学びの場。すでに350のお寺の僧侶が学び、卒業している。
カリキュラムは、共同経営者の経営コンサルタントで、人材開発プログラムなどを作ってきた井出悦郎氏のノウハウと、松本氏がインドのビジネススクールで学んできた経験などを元に作成されている。現在は一般社団法人お寺の未来として、フルタイム職員4名の体制で運営している。
「寺業と書いて『じぎょう』と読みますが、寺業計画書の策定を卒業課題とし、現状把握やお寺運営の基礎、ビジョン到達のための戦略、マーケティング、リーダーシップ、財務などを学んでいただきます。ビジネスマンであれば現場で経験することでも、お坊さんは経営に関して知識も経験も少ない場合が多い。住職になるプロセスの中に、組織運営を学ぶフローがありません。多くは、先代のやり方を踏襲しているのみ。しかし、これからはそういうわけにはいきません。
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