自分のお寺はどんな価値を提供できるのか、そして伝わらない説法を伝えていくために、どう言葉を磨いていくのか。それが現代の僧侶に求められる課題だと思います。お寺を必ず次世代へとつなぐために、お坊さんが経営的視点を持つことは必要です。特に、お寺の代表役員である住職は、宗教者であり経営者。経営力を磨くことは、住職に託された大きな責任でもあり、それが『朝飯前』にできた上で、宗教者として研鑽を積むべきなのではないかと思うのです」
“パッと見の衣装が変わるのではなく、体質が変わるような感覚”で、お寺が変わっていくという未来の住職塾。宗派を超えて僧侶たちが集まる場ができたことは大きな意味を持ち、ここで共有されたものが業界に浸透しつつあることも、変革期をもたらしたひとつの要因といえる。
仏教に触れる場を作っていく
かつて、宗派を超えた活動は、組織文化や教義解釈の違いで壁を超えるのが難しかったが、「仏教の教え」という切り口ではなく「お寺組織の運営」という切り口で共通軸を作ってみると、寺院相互の深い理解と信頼の基を生み出すことができた。これは革命的なことだ。
「ダボス会議に出席すると、学者、ビジネスマン、テクノロジー関係やベンチャー、NPOの方々など、世界中の方々にお会いします。目には見えない価値、宗教性、時代性などに興味があり、それらを大切にしている人達と話をする機会が多く、仏教やマインドフルネス、メディテーションへの興味の高さを感じます。理由のひとつには、社会が成熟し、稼いで消費することの虚構性に気づき、手放すことの豊かさに気づいたこともあるかもしれません。
仏教的な考え方を自分の生活に取り入れてみたり、マインドフルネス(心を「今」に寄せる)を実践する人も増えてきました。現代社会の仏教に対するまなざしを考えれば、仏教に触れる『場』を作っていくのも、僧侶の仕事です。その場にどんな人がいるかによって、響く言葉も変わります。場に応じて必要な振る舞い、コミュニケーションも開発し、そういう考え方を広めていくのも、今の仕事のひとつだと思っています」
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