廃棄食品横流しのダイコー、「隠し倉庫」の闇 実は県の担当者も知らない保管場所がある

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積替保管とは、排出事業者から中間処理施設や最終処分場に産廃を運ぶ際、廃棄物を一時的に保管し、別のトラックなどに積み替えること。一定量を貯めることにより効率的に運ぶことができ、時間やコストの削減になるが、囲いの設けられた保管場所に管理者の名称や連絡先を掲示しなければならない。

その上で、「あらかじめ積み替えを行った後の運搬先が定められている」「搬入された産廃の量が積み替え場所で適切に保管できる量を超えない」「搬入された産廃の性状に変化が生じないうちに搬出する」などの基準を守らなければならない(日本産業廃棄物処理振興センター)。

愛知県内の産廃処理業者は「どの業者でもできることではない。ダイコーが2012年に積替保管を許可された時点が、一つの転機だったのではないか」と指摘する。もちろん、許可は取っても実際の積み替えを前述の「隠し倉庫」でしていたとすれば、完全にアウトだ。

愛知県の産廃担当者は絶句

だが今の今まで、愛知県も地元の稲沢市も、届け出書類上にないこの施設は存在すら把握していなかった。「本社や配送センター以外に、まだあるんですか」。25日、愛知県の産廃担当者は記者の取材に絶句した。

行政も排出事業者も、同業者も見抜けなかったように見えるダイコーの不正。だが、どこかにシグナルはなかったのか。

廃棄物処理法や食品リサイクル法は改正され、悪質な業者を排除する仕組みが整いつつあった。ただし、それは廃棄物が最後まで適正に処理されているかなどを定期的に調査する「注意義務」など排出者側や、それを指導する自治体の責任をただすことが前提だった。

産廃事業者らは、業界を挙げて「適正処理」「優良化」の取り組みを進めていた。ダイコーの同業者によれば、大西会長は2014年に愛知県と県産業廃棄物協会が共催した、適正処理を促進する「優良化セミナー」に参加していた。どこかで会長が立ち止まるタイミング、引き返す道はあったのかもしれない。

それでも、さまざまな抜け道があり、無責任があり、偽りや悪意があることを、今回の事件は示している。

「食品リサイクルの世界はタブーが多すぎる」「ブローカーも暗躍している。影響は全国に広がる」と業界関係者は漏らす。この“隠し倉庫”は、どれほど深い闇の入り口なのだろうか。
 

関口 威人 ジャーナリスト

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せきぐち たけと / Taketo Sekiguchi

中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で環境、防災、科学技術などの諸問題を追い掛けるジャーナリスト。1973年横浜市生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科修了。

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