メジャー選手も自分で宿泊予約から洗濯まで

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プロゴルファー/小林浩美

 数カ月前から始めたダイエット。わずかな体重変化に一喜一憂し、目標値を定めてカレンダーに書き込んでいる。先日ふっと見てみたら、始めた頃の体重と大差なかった。道のりは厳しい。

さて、だいたいのツアープロは試合が始まる前に、宿泊施設やレンタカー、飛行機のチケット手配などの予約を入れる。自分でやる場合とマネージャーや他の人にやってもらう場合がある。

米ツアーに参戦し始めた頃、選手ラウンジに備え付けてある電話から、あの殿堂入りしているナンシー・ロペスが、自分で宿泊の予約をしているのを見てびっくりした。もちろん彼女にマネージャーはいたが、時折見かけるだけで日本のように年中選手に付いてきてはいなかった。他の有名プロも同様だったので、米国では自分たちでやるのが普通なのだと感心した。

当初英語のできなかった私は英語の堪能な友人に頼っていたが、それからは自分でやるようにした。とはいっても、まず電話で自分の英語が通じるかどうか不安になった。またそれ以前に、相手の話していることがきちんと理解できなければいけない。ドキドキ高鳴る胸を押さえながら電話をして、何とか成功したときには無上の喜びだった。実はその前に、プロたちがラウンジから予約するのをそばで何度も見て聞いて、実際同じような質問を受け答えるだけだから、オウムのように真似をしたのだった。余談だが、当時選手ラウンジに付いていた電話は、電話会社がスポンサーとなって無料で使い放題。長電話は禁物だったが2~3台あったので、時差を利用して、時折日本の家族へ国際電話をかけ、寂しさを癒やした。

また、広い国土を移動して試合をするため、3~5週間は自宅に戻らない。だから、ゴルフウエアも少なくても2週間分は持って出る。では足りない分はどうするのか。途中コインランドリーで洗濯をする。プロもキャディもみんな洗濯をする。クリーニング店があるのにどうして?理由は自分がゴルフウエアを出してわかった。素材のよいものが縮んで戻ってきたのだ。それからは私もコインランドリーを利用した。次の試合先に移動した月曜日、ホテル近くのコインランドリーでまたナンシー・ロペスに会った。彼女も洗濯機で洗い物を回している。乾燥が終わるまで本を読んだり、おしゃべりしたり。米ツアーでは普通の光景だ。乾いたゴルフウエアは組み合わせを替えて試合で着るために、前の晩にアイロンをかける。米ツアーに参戦当初は今のようにホテルの各部屋にアイロンが付いていなかった。だからみんな自分のアイロンを携帯していた。テレビを見ながら、あるいは一緒に泊まっている仲良しのプロとおしゃべりしながらアイロンをかける。

今では、ネットや携帯電話、メールもできて、とても便利になったが、基本的に自分でやるという点では、なんら変わりがない。


プロゴルファー/小林浩美(こばやし・ひろみ)
1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)理事。TV解説やコースセッティングなど、幅広く活躍中。所属/日立グループ。
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