中古クラブと食べ残し

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インスパイア取締役ファウンダー/成毛 眞


 昨年はドライバーを1本、ユーティリティを2本、パターを1本買った。実は、すべて中古品である。へたに話題の新製品などを持ってコースに出ると、ライバルが揶揄してくるに違いないからだ。
 悪いショットを打てば「クラブが泣いてるぞ」と声がかかるのは当たり前、よいショットを打っても「ナイスクラブ!」と容赦ない。しかし、中古クラブであれば、黙って見逃してくれるのだ。
 4本とも自宅近くの中古ゴルフクラブのチェーン店で買った。最近ではネットでも中古品が買えるらしい。ところが、大手のゴルフ用品店やスポーツ用品店では中古品はあまり扱っていないようだ。メーカーが嫌がっているのかもしれない。

ところで、ゴルフ用品と同様に趣味性の高いスポーツカーの世界では、BMWなどのカーメーカー自身が、オーソライズドカーというメーカー保証の中古車を販売するのが当たり前になってきている。
 カーメーカーは自らがきちんと車を整備し、保証をつけることで中古車の販売価格を高く維持するのだ。結果的に中古車の仕入れ価格も高くすることが可能になる。カーメーカーの真の狙いはここにある。
 ユーザーはたとえ新車価格が高くても、中古車として売るときに高く買ってもらえることが確定しているのであれば、使用期間当たりの費用はむしろ安いと考えるはずだ。つまり、中古品の仕入れ価格の保証があれば、高価格の新製品も売れるという理屈なのだ。
 大手住宅メーカーの保証も20年から50年になりつつある。さらに住宅の持ち主が変わっても長期間の保証が続くことで、このメーカーの中古物件価格は上がり、結果的に新築着工数は増え、高価格を維持することもできるであろう。

ゴルフでもう一つ期間費用が発生するのは、ゴルフ場の会員権だ。バブル期には期間収益だったのだが、いまでは会員権価格が下がり続け、日本全体では巨額の期間費用が発生しているはずだ。
 かつて数億円もした会員権が、タダ同然になっていることもある。理論的にはプレー1回当たりの費用は数百万円にもなるはずだ。しかも、最近ではビジターでも予約を受け付けてくれる、かつての高級ゴルフクラブも現れた。
 こんなクラブでプレーをするときには、前夜に最高値と現在価格の差を計算しておくことにしている。そして、当日は理論的な価格と実際のプレーフィーとの差を感じながら、リッチな気分を味わうのである。
 しかし、このような高級ゴルフクラブの食事は平均より、かなり高いような気がする。いくら中古好きでも、食事だけは誰かの食べ残しをいただくわけにはいかない。

インスパイア取締役ファウンダー/成毛 眞(なるけ・まこと)
1955年北海道生まれ。アスキーなどを経て、91年マイクロソフト日本法人代表取締役社長。2000年に退社後、投資・事業開発コンサルティングのインスパイアを設立。趣味はジャズレコード収集やプラモデルなど多数。無類の読書家としても有名、書評も多く手掛ける。
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