塩分の摂取を止められた。精密検査の結果、腎臓が半分しか機能していないという。25年にわたる糖尿病の影響が大きいらしい。糖分を限りなくゼロにし、卵や魚卵を取るなと言われ、マイしょうゆを持ち歩く私に、さらなる仕打ち。
「このままだと、人工透析をするようになりますよ。いいですか? 」と尋ねられても、「ハイ」とは言えまい。週に3~4日、それも毎回4時間、雨の日も、風の日も、病院に通わなければ命の保証はない。しかも、塩分規制ばかりか、水分の補給も限られる。「食べ物は我慢しても、ゴルフや音楽やカメラ、小倉さんにはたくさんあるじゃないですか。もっと摂生してください」と医者。
なるほどそうか。数値が改善すれば、人工透析は免れる。体さえ動いたら趣味の楽しみは奪われずに済む。秋田生まれの典型的辛党は、周囲にあった塩、しょうゆを目の前から抹殺した。
それにしても、しょうゆを使わない刺身や寿司、塩をしていない焼き魚、ドレッシングのかからない野菜サラダ、口にするものすべてがまずい。特に好きな麺類は、ラーメンもうどんも蕎麦も食べられず、カレー、ビーフシチューなどなど、塩分量の多いものもアウトだ。私が焼き肉店の親父と知りながら、「焼き肉は言語道断、食べたければタレなしにしてください」と言い切る医師は、懇願しても、のれんに腕押し。とにかく、無味なる食べ物に挑戦して、過酷さに泣いている。
いちばん困るのがゴルフ場のレストラン。すでにモーニング・セットの目玉焼きは抜いていたのだが、塩が含まれるパンやバター、ベーコンがメニューから消え、食べられるのは単なる味のない野菜サラダの塊だけ。
昼は昼で、牛肉、豚肉、魚をカロリー過多にならぬよう少量頼み、ただ焼くか炒めるかで味付けはなし。食事の楽しみは皆無となった。ゴルフのスランプから脱却しつつある私にとっては、地獄の苦しみが倍加して、再び、お先真っ暗である。
飲んだくれてカロリーばかりが増え、単なる豚になっていた私。親譲りのDNAに原因があると言われているとはいえ、あの頃、30代前半にゴルフを始めておけばと後悔が残る。経済的な余裕のなさはあっても、その分、ゴルフをやっていたら、こんな体にはならなかっただろう。
私が考えていたように、「ゴルフは年寄りのスポーツ。カネもかかりすぎるし、若者には向かない」と毛嫌いする人に忠告。いま、ゴルフは安くプレーできるスポーツ。そして、若ければ若いほど上達するし、面白くもなる。歳を取って、体がいうことをきかなくなってからでは遅すぎるだろう。スコア・アップのために筋力を強化し、ジョギングでもしておけば、鬼に金棒。引き締まった肉体でシングル・プレーヤーなら、女性にも相当モテるに違いない。少なくとも、私のようにまずい料理を食わずに済むはずである。
1947年秋田県生まれ。東京12チャンネル(現テレビ東京)アナウンサー出身。76年フリーに。現在は『とくダネ! 』(フジテレビ系)や『嵐の宿題くん』(NTV系)、『小倉智昭のラジオサーキット』(ニッポン放送)の司会を務めるなど、幅広く活躍中。
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