不況なのに”危ない”会社が大幅減の怪、「継続企業の前提」開示の基準が緩和
金融庁は2009年3月末の決算期から、倒産リスクを警告する「継続企業の前提に関する注記」の基準緩和に踏み切る。空前の大不況で経営基盤が弱体化する企業が増えている現状に逆行し、表面上は「危ない会社」が減ることになりそうだ。一部では「特定大企業の救済が隠れた狙い」との観測も浮上し、唐突な制度変更に波紋が広がっている。
現行制度では、事業を続けられるか危ぶまれる会社は、監査法人の意見を踏まえ、決算書類への「注記」が義務づけられている。連続営業赤字や取引銀行による融資ストップ、債務超過などの事態が一度でもあれば、有価証券報告書や決算短信の「注記」で投資家に知らせる必要がある。
ところが、新制度では、融資打ち切りや一時的な債務超過といった深刻な財務リスクに直面しても、その後に資産売却や増資などの対策を打てば、注記を記載しなくても良いことになる。
注記の対象は3月末時点で約170社と過去最高。2009年3月期決算発表で危ない企業がさらに急増し、信用不安の広がりは必至とみられていたが、新ルールでは注記が減るのは確実だ。
今後は、期中に企業がどのような経営リスクにさらされたのか、一般投資家には見えにくくなる。監査法人が注記に該当するか判断する際、手元資金の動向が最重視される。業績不振企業の中期経営計画で、将来の利益成長よりもリストラや資金調達に重点が置かれているようなら、「注記逃れ」の可能性を疑ったほうが良い。
今回の規制緩和を金融庁が決めたのは年度末ぎりぎりの3月24日。同庁長官の諮問機関である企業会計審議会監査部会で了承を取り付けた。その後、原案への意見公募をわずか1週間程度で済ませ、4月9日の同部会で最終決定。20日に公布される。
決算発表時期に変更なぜ金融庁は急ぐのか?
金融庁は「欧米に足並みをそろえるだけ」と「他意」を否定する。同監査部会では、出席した委員の一人が「情報開示が後退しないように」とくぎを刺した程度。関係筋によれば「もっと早くやるべきだった」との声はあったが、目立った反対論は聞かれなかった。かくして6月末が提出期限の09年3月期の有価証券報告書に何とか間に合うことになる。