能力の低い人ほど、自分を「過大評価」する 気鋭の脳科学者が「ココロの盲点」を明かす

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まず「おとり効果」から。たとえば、カレー店を経営しているとします。店のメニューは、

普通カレー ¥1000
特製カレー ¥1500

 

の2つです。すると客の多くは安価な普通カレーを注文するかもしれません。

そこで認知バイアスを利用して、特製カレーの注文を増やし、増収を図ることができます。どんな対処法が考えられるでしょうか。

最もシンプルな方法は選択肢をひとつ増やすことです。

普通カレー ¥1000
特製カレー ¥1500
極上カレー ¥3000

 

この選択肢から選ぶ場合、特製カレーへの選好が心理的に高まることが知られています。高額な極上カレーをオプション(おとり選択肢)に加えることで、相対的に特製カレーを安く感じさせることができるわけです。これが「おとり効果」と呼ばれる理由です。

おとり効果については、米マサチューセッツ工科大学のアリエリー博士らの面白い実験があります。経営学専攻の学生に英経済誌『エコノミスト』を定期購読してもらいました。

ウェブのみ購読  $59
冊子&ウェブ購読 $125

 

という選択肢では、冊子とウェブの同時購入を選んだ学生は32%だったのですが、選択肢を増やし、

ウェブのみ購読  $59
冊子のみ購読   $125
冊子&ウェブ購読 $125

 

としたら84%の学生が冊子とウェブの同時購入を選びました。冊子の値段を「冊子&ウェブ」と同一に設定することで、見かけ上のお得感を狙っているわけです。実際、この効果は絶大で、おとり選択肢をひとつ増やしただけで、40%以上の収入増となりました。

選択肢が多すぎると逆効果

ただし、やみくもに選択肢を増やせばよいというわけではありません。なぜなら「選択肢過多効果」と呼ばれる認知バイアスがあるからです。コロンビア大学のアイエンガー博士らのデータを紹介しましょう。

博士らは、ジャムの試食販売ブースで、6種のジャムを売る場合と、全24種を売る場合を比較しました。立ち止まる人は24種のブースのほうが多かったのですが、実際に商品を買ってもらえる率は反対に6種のジャム売り場のほうが高くなりました。結果として、6種陳列のブースのほうが、7倍もの売り上げをあげたのです。

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