能力の低い人ほど、自分を「過大評価」する 気鋭の脳科学者が「ココロの盲点」を明かす

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こうした脳の本質的なクセを知ると、労働の価値について考えさせられます。贅沢三昧で悠々自適な生活は、誰もが憧れます。しかし仮にそんな夢のような生活が手に入ったとして、本当に幸せでしょうか。

定年で突然仕事を奪われた手持ち無沙汰さからストレスを溜めこんでしまう「定年症候群」が近年しばしば話題にのぼりますが、働いて得た給料と、労働せずにもらえる年金では、おなじ1円でも価値が異なるというわけです。

ちなみに、これまで調べられたなかで、コントラフリーローディング効果が生じない動物が、一種だけ知られています。飼いネコです。ネコは徹底的な現実主義です。レバー押しに精を出すことはありません。

最後に「上流階級バイアス」を紹介しましょう。簡単にいえば「金持ちはマナーが悪い」という傾向です。意外にも思いますが、これもまた認知バイアスのひとつです。これを証明したのがカリフォルニア大学のピフ博士らです。原著論文には、これを支持する実験証拠を7つ発表しています。ここでは3つ選んで紹介しましょう。

まずピフ博士らは運転マナーについて調査しました。車のレベルが社会的ステータスを反映していることはよく知られています。博士らは、車のランクを高級車から大衆車まで5つに分類し、階級別に交通規則をどれほど守っているかをモニターしました。

すると、横断歩道で手を上げている歩行者を待たずに通過してしまう確率は普通車35%のところ、高級車は47%であることがわかりました。また、交差点で相手の車を待たずに割り込む率は普通車12%のところ、高級車は30%と2.5倍にもなったのです。

下流階層と上流階層のそれぞれの傾向

次にピフ博士らはボランティア参加者を集めた実験を行いました。たとえば、参加者に面接官になってもらいます。就職希望者とうまく交渉しながら採用者の給料を決定するのです。この際、重要な事実があります。志願者は長期的で安定した職を求めていますが、実は、今回の採用ポジションは近々廃止予定なのです。さて、面接官は志願者にこの不都合な真実を告げるでしょうか。

実験の結果、下流階層の人は素直に事実を告げて志願者と交渉する傾向が強かったのですが、社会的ステータスの高い人は事実を隠したがることがわかりました。「あとから状況が変わったことにすればよい」という作戦でしょうか、ともかく騙してでもいいから、自分に有利に交渉を進めるわけです。

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