「きれいなCA」というだけでは婚活に勝てない 東京の「婚活事情」最前線<3>
CAとは、今でもあこがれる女が多い職業だ。
CAになれば華やかな仕事や生活が約束され、素敵な男性と出会い結婚ができる。そんなイメージはまだ根強い。実際、20代前半から半ばまで奈緒美に出会いの場は多かった。
今の時代、CAは一昔前ほどの倍率や希少性はないのかもしれない。しかし、空港であの定番だが目を引く制服を着こなしさっそうと歩き、機内では上品な笑顔を浮かべ優雅に接客する彼女たちに焦がれる男たちは少なくない。商社、広告代理店、外銀、ベンチャー企業の社長たち、また旬の芸能人など、奈緒美たちは魅力的な男たちに囲まれていた。
3年目くらいまでは、チヤホヤされて有頂天になってた
プライベートでも空の上でも数多の男たちから声をかけられ、奈緒美は東京という都会の楽しさを知った。若くきれいな女がCAというブランド名を魔法の杖のようにかざせば、男たちはそろって好奇の目で彼女たちを見つめ、あの手この手で気を引こうとする。
親元を離れた自由な一人暮らし、あこがれの仕事。同じように選び抜かれ、美しく洗練された同僚たち。
そして、そんな自分たちを崇める男たち。仕事では国内海外に飛び周り買い物や食事を楽しみ、休日には女友達からも男たちからも時間が足りないほど多くの魅力的な誘いを受ける。地元や大学時代の生活とは比べものにならない、奈緒美の東京生活は絶好調のスタートだった。
「今思えば、3年目くらいまでは、本当にチヤホヤされて有頂天になってた。男の人にも女友達にも連れていかれる場所みんなオシャレで楽しくて。合コンの帰り道に初めてタクシー代って1万円を貰ったときは、私、このレベルまで来たんだなって胸がゾクゾクした。」
奈緒美も同僚の女たちも、そんな都会の暮らしに溶け込むうちに、東京の街を知り尽くし、目も舌も肥え、そして周りの男たちのレベルもどんどん上がっていった。彼らは奈緒美たちを次から次へと楽しく魅惑的な場所へ連れ出そうとする。
有名シェフのレストラン、隠れ家のようにひっそりとした鍵付きのバー、東京に新しく参入した外資系ホテルのスイートルームのパーティ。自分たちはその場を飾るに相応しい。女盛り。20代後半に差し掛かった女によくあるように、奈緒美も例外なく高飛車な女になっていった。それが許される身分だと自覚したうえで。