フランスワインの定着 その3:ブルゴーニュワイン《ワイン片手に経営論》第7回
フランスのパリから高速鉄道(TGV)で南東に1時間40分ほど乗ると、ディジョン・マスタードで有名な街のあるディジョン駅に到着します。フランスのワインの二大産地といえば、ボルドー地方とブルゴーニュ地方ですが、このディジョンという街は、ブルゴーニュのワイン産地の北端に位置し、ここから74号線を南下していくと、コート・ドール(黄金の丘)といわれる世界有数のワイン産地が30キロメートル近く続きます。
私は2004年の秋、この街に二度目の訪問を果たしていました。一度目は学生時代、フランス語を勉強するため、この地にあるブルゴーニュ大学の夏期講座に参加したときでした。当時は、フランス語現役で、日常会話程度は上手に操っていましたが、今ではすっかり忘れてしまっており、記憶の彼方から引っ張りだした赤錆だらけのフランス語を片言で話しながら、タクシーの運転手に行き先を告げ、ディジョン駅から更に車で10分から15分にあるクロ・ド・ヴージェオという街を目指しました。
この街にはシャトー・デュ・クロ・ヴージェオという、観光客にも開放されていて中を見学することができるワイナリーがあります。広いブドウ畑の中に、ポツンと建ち、周囲は高い塀で囲まれており、訪問者を拒むような雰囲気の中、何も知らないで訪れると、どう入っていいか分からなくなりそうです。中に入ると、ブドウの圧搾機や人の身長を優に越える大きな樽などが置いてあり、ワインの生産がここで行なわれていたことが分かります。この場所は「シャトー」といいますが、修道院であり修道士が聖職活動をしながら、ブドウの栽培とワインの生産を行なうところでした。
それにしても、シャトーの塀は、なぜこんなに高くしてあるのでしょうか? また、なぜ修道士がワインの生産を行っていたのでしょうか?
この二つの疑問に、「なぜローマからもたらされたワインが、現在のフランスにこれほどまでに定着したのか?」という疑問を重ね合わせると、そこに重要な意味合いが見えて来る気がしています。