離陸するカーシェアリング、成熟産業・リース業界はサービスで競争

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 1台の自動車を複数の会員で共同利用するカーシェアリング。立ち上がったばかりのこの市場がにわかに活気づいている。

2002年からカーシェアリング事業を手掛ける最大手のオリックス自動車は、4月20日から5月中旬にかけ、都内のJR山手線全駅にカーシェアリング拠点を設置する。同社のカーシェアリングサービス「プチレンタ」は保有台数292台、会員数は4300人超と他社を大きくリードしている。さらに利便性を向上させ、独走態勢を固める狙いだ。

3月19日にはJR東日本が子会社を通じて参入した。東京駅、川崎駅、八王子駅に計6台からスタートし、2年間で首都圏十数カ所に拡大していく方針を打ち出している。

節約志向が追い風だが事業化エリアは限定的

カーシェアリングは、入会金(5000円程度)と月会費(1000円程度~)に加えて、時間と距離に応じた料金負担で自動車を使用できるサービス。車両代金、駐車場代、保険・税金・車検など固定費がかからないので、週末の買い物程度なら所有するよりもコストは安く済む。

08年前半のガソリン高で自動車の所有コストが再認識されたことから、カーシェアリングへの注目が一気に高まった。ガソリン高は一服したが、景気低迷による節約志向でむしろ関心は高まっている。移動コストを“見える化”するので、無駄な自動車利用を減らせる効果があり、環境意識の高まりも追い風だ。

「待ってましたとばかりに会員が集まっている」と語るのは、三井物産100%子会社のカーシェアリング・ジャパン(CJ)の鈴木大山副社長。1月22日に開始したサービス「カレコ」は2カ月で保有台数15台、会員数150人に達した。「3月末までに10台の計画だったので予想以上のペース」とほくそ笑む。

オリックス自動車の高山光正カーシェアリング部企画担当部長も「以前はカーシェアリングとは何かの説明が必要だったが、最近は、自宅近辺で始めてほしいという要望が急増している」と手応えを話す。参入企業数はすでに20社を超えた。

そもそもカーシェアリングが事業として成り立つのは3大都市圏と地方中核都市まで。公共交通機関が少なく、移動手段を自動車に頼る地方では事業化は難しい。その限定された市場で、20社共存は厳しそうだ。

カーシェアリングでは、1台を20人でシェアするより、10台を200人でシェアしたほうが「使いたいときに使えない」不便を減らすことができる。一定地域内で一定数の会員を集めるドミナント戦略により、利便性を維持したまま8台で200人を賄うことも可能になる。

加えて、カーシェアリングは典型的な先行投資型ビジネスである。運営や課金のシステムなどの初期投資コストは、台数規模が10台でも1000台でも大きく違わない。駐車場と自動車を用意し会員を確保しながら、エリアを拡大していくには、先行投資期間は一定の赤字を覚悟する必要がある。つまり、利益を生み出すには、いかに早く、損益分岐点を越える事業規模、クリティカルマスを達成できるかが勝負となる。

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