離陸するカーシェアリング、成熟産業・リース業界はサービスで競争
1000台が黒字化目安 生き残りは数社か
このクリティカルマスの目安は「5年で1000台」と鈴木CJ副社長。CJは5年で1000台の計画で事業をスタートしたが、環境次第では拡大ピッチを上げるという。オリックス自動車も、「2年後に1000台、13年に2000台をもくろんでいる」(高山部長)と先頭を譲る気はさらさらない。
もっとも、台数を増やせば成功が約束されるわけではない。現状の加入者は個人が大半。だが、個人会員ばかり増えると、利用が週末に偏ってしまう。稼働の平準化には平日利用が主体の法人会員を獲得する必要がある。かといって、安い料金体系を打ち出せば、会員を獲得できても赤字のままの状況になりかねない。
各社の価格設定にも微妙に違いがある。先行するオリックス自動車は需要創出を優先し、やや低めの価格設定。利益化のハードルは高そうだ。リース、レンタカーとの相乗効果は強みだが、値上げを検討する必要が出てくるかもしれない。JR東日本はカーシェアリング事業単独ではなく、あくまで鉄道の利便性向上が念頭にある。カーシェアリング専業のCJを含め、各社の戦略の違いも今後は影響してくるはずだ。
走り出したばかりのカーシェアリングに対し、すでに大きなマーケットを築いているのが自動車リースだ。国内リース車台数は300万台超、7000億円市場に達する。これまで順調に成長してきた自動車リースだが、現在は逆風下にある。
リース車保有台数は08年に過去3度目の前年割れになった。1993年と97年はいずれも翌年2ケタ成長に復帰した。しかし、09年は1、2月とも前年割れでスタートしており、2年連続のマイナス成長となる可能性が高い。00年代に入って成長率は1ケタ台が続いており、市場が成熟期を迎えたことは明らかだ。
加えて、少し前まで自動車リース業界が謳歌していた中古車バブルも崩壊した。近年、ロシアを中心に盛り上がった新興国の中古車需要は、ロシアの中古車輸入規制や新興国の景気悪化により反落、リースアップ車価格は大きく下落してしまった。
自動車リースの利益は、大手でも1台につき月百数十円という薄利。そこにオンされるリースアップ車の売却益は利益への貢献が高かった。それだけに、「赤字になるわけではないが、ここ数年のオマケがなくなる」(岩崎裕・住友三井オートサービス常務執行役員)のは痛い。
一方、「厳しいのは確かだが、拡大余地はまだまだある」と断言するのは、最大手、オリックス自動車の北山博専務執行役員。現在、日本国内の自動車保有台数は約7700万台、法人保有に限れば約2500万台だ。そのうちリース車の占める割合はそれぞれ4%弱、10%強。確かに開拓余地はありそうである。