「褒めて育てる」でダメになった日本の若者

エセ欧米流が子どもの生命力を歪めた

榎本 博明(えのもと・ひろあき)/1955年生まれ。東京大学教育心理学科卒業。東芝勤務後、東京都立大学大学院へ。心理学博士号を取得。米カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学助教授などを経て、MP人間科学研究所代表。産業能率大学の兼任講師も務める。20校を超える大学で教えた経験を生かし講演、執筆活動を行う。

──「褒めて育てる」が推奨されて、20年を超えます。

1990年代から推奨されて、それと並行して、学校教育でも新学力観が適用された。それまでの競争による知識偏重をやめて授業中の態度や関心で成績を決める方向だ。テスト結果のトップクラスの子が5段階評価の5ではなくて4になり、テストはトップクラスでなくとも、たとえば先生に頻繁に質問する子は5になる。これが文部科学省の基準に照らせば正しい。結果がすべてとすると、知識偏重の競争社会が深まってしまう。それを防止するために勉強のプロセスを評価するというわけだ。

国際比較で日本人の学力が低迷しているのは確かなのだが、褒めて育て、成績では厳しく競わせない。そういう風潮で育った今の親世代がまた子育てをするサイクルに至った。もはや褒めて育てるという思想は打ち砕きにくい厚い壁になった。

──厚い壁?

態度や関心でのプロセスを評価するとなると、ついつい自分に対していい態度を取る人に対して評価を高くしてしまう。日本人はとかく関係性で動くから、大人の社会の人事評価自体もうまくいっていないが、それが学校にまで持ち込まれた。グローバル化が進む中で、せめて学校では実力主義でやるべきだと思うのだが。

褒められるのが当たり前になる子どもたち

──そこまで浸透したのですね。

調査の結果、年代で全然違う。若い人だと70%ぐらいが父親や母親によく褒められている。中年以上には、逆に父親は厳しかったという人が多い。文化がはっきり変わってきたのだ。無言のうちに一体感があって、はっきり言われなくても親の愛情は感じる文化から、厳しさ抜きの“エセ欧米流”が取り入れられて褒めまくる。子育て書にも子どもを褒めまくれば伸びる、そんなようなことがいっぱい書かれている。

──弊害が目立つのですね。

褒めまくられて育てられると、褒められるのが当たり前になる。逆に褒められないとやる気がなくなってしまう。「褒めてくれないと自分たちはめげる世代だ」と言う若者も多い。学生時代はそれで通るかもしれないが、社会に出てそれが通るわけがない。そういう若手社員は、うちの上司は褒めてくれないからモチベーションが上がらない、命令してくるからムカつく、さらには人間として対等な立場なのだから、人にモノを頼むのなら上司はお願いすべきだとさえ言い出すようだ。

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