失速する北海道観光で唯一好調な十勝の秘密、スイーツ王国を売り込め!《特集・日本人の旅》
一方、地元菓子業界も頑張っている。「地方の菓子店の知名度が上がってきた。今度はお客さんに店へ足を運んでもらう番だ」。道菓子工業組合十勝支部長で、十勝を代表する菓子メーカー、柳月の田村昇社長は一昨年から始めた「菓子王国十勝スタンプラリー」の狙いを説明する。
十勝には明治・大正に創業された老舗を含め、大小100以上の菓子店がある。国内でも有数の畑作・酪農地帯である十勝には昔から製糖工場があり、戦前、製品の砂糖が農家へ支給された。これを集めて菓子づくりが盛んになった経緯がある。さらに、菓子の主原料である小豆、小麦、生クリーム、バターなどの一大産地でもあり、それが十勝を菓子王国たらしめるゆえんだ。
とはいえ、菓子店の店主たちは概して職人気質。横に相互につながる意識は薄く、各店がバラバラに点在するにすぎなかった。
土産物としての認識から食を観光の目玉に据える
それを変えるきっかけになったのが、同組合が帯広の百貨店、藤丸で1999年に始めた「菓子王国フェスティバル」だ。毎回30店ほどが参加し、菓子を実演販売。回を重ねるごとに地方の菓子店の知名度がアップし、本州の物産展へ出品する店も出始めた。スタンプラリーもこうした取り組みが下地になっている。
昨年4月下旬から3カ月間行われたラリーには42店が参加。10店以上のスタンプを集めると特典が付くが、うち4店以上は帯広以外の地方店とする条件を設け、地方へも出向いてもらう仕掛けを施した。組合では、街のPRステーションとして来店客へ地域の観光スポットを紹介するよう各店へ要請。今回のラリー参加者は120人程だったが、北見、日高など十勝以外の地区から参加者を得たことが注目される。
田村支部長は「もはや個店の時代ではない。地域が一体となり、イベントを打ち、PRを図る。これによって遠方から客を呼べる」と話す。
十勝観光連盟でも、これまで「点」で散在していた十勝の食を結び、「面」にする試みを昨年開始した。