「がんが治る」保証ないニセ情報が危険すぎる訳

間違った治療を選択しても責任は患者にある

会社経営者に送られてきた「水素ガス吸入器」

「水素吸入療法」に関しては、慶応義塾大学病院の救急科が、厚生労働省から先進医療Bの指定を受けて、心停止後症候群の患者を対象にした臨床試験を実施している。これは、心停止から回復した患者の後遺症に水素吸入療法の有効性を確認する臨床試験。「がん」や「新型コロナ」の治療や予防効果とはまったく関係ない。

「今あるガンが消えていく食事」「ウイルスにもガンにも野菜スープの力」「死なない食事」「ガンは食事で治す」……。

書店に並ぶ本のタイトルを見ていると、まるで食事を工夫するだけで、がんが治ってしまうと錯覚するかもしれない。実際、アマゾンの「がん関連」の売れ筋ランキング上位100冊のうち、実に37冊が食事関連の本が占める(6月21日時点)。

私は拙著『やってはいけない がん治療 医者は絶対書けないがん医療の真実』を上梓するなど、医師には絶対書けないがん医療のタブーや、詐欺的ながん医療を目利きするヒントなどを追っている。

がん患者やその家族が、食事療法を信じる最大の理由は、「医師」や「歯科医」が提唱していることだ。加えて、国内外の名門大学で「教授だった」という経歴は、食事療法の信憑性を高める効果を持つ。

「肩書き=信用」という価値観が、私たちに刷り込まれているからだろう。ただし、巷に氾濫する食事療法の本について、詳しく内容を分析してみると、臨床試験などの科学的手法で、有効性を証明したものは1つも見当たらなかった。

「食事でがんが消えた」のカラクリ

本で紹介されているのは、各医師による独自の食事療法で「がんが消えた」とされる「物語」ばかり。しかも、食事療法だけで「がんが消えた」のではなく、がんの治療法として確立されている「標準治療」を併用しているケースが大半を占める。

食事療法の本から、象徴的な1例を挙げてみよう。

「乳ガンから、肺や脳など全身に広がった転移ガンが完全消えた」とされる56歳女性のケース。

しぼりたてニンジンジュースを1日3回、400〜500ミリリットル、3食を十穀米入り玄米、おかずは野菜やキノコ類、豆腐など。

こうした食事を続けるように指導した結果、全身に点々とあったがん細胞が、すべてキレイになくなった」

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